第36話「竜核の心臓、黒き胎動 ― 」
いつも読んでいただき、本当にありがとうございます!
それでは本編をどうぞ!(*'▽')
王城全層が悲鳴のように軋んだ。
黒竜脈が壁面を走り、床を割って噴き出す。
“胎動”と呼ぶべき振動が、間欠的な爆発音を伴って城中を駆け巡った。
ミミが叫ぶ。
「な、なんか今日の黒竜脈、さらにヤバいッスよ!?
これ、王城丸ごと飲まれるッス!!」
ノクトの魔導端末が狂ったように鳴る。
「警告レベルが更新され続けています……!
竜核の鼓動が“倍速”になっている……!
これ……誰かが強制的に覚醒段階を引き上げてる……!」
ナナシは黙って前を見据える。
その奥――
黒い脈動の源が存在していた。
王族封印室を越え、さらに奥へ。
誰も足を踏み入れたことのない“竜核の心臓層”が口を開く。
そこは巨大な球体の内部のような構造だった。
壁一面に黒竜脈が脈打ち、中心には浮遊する核――黒い結晶が展開している。
エレナは息を呑んだ。
「……これが、竜核……。
王家が代々守ってきたはずの……“世界の心臓”……」
しかしそれは、守られるべきものの姿ではなかった。
生き物の胎動。
呼吸のような膨張収縮。
鼓動のたびに黒い波が空間を満たし、空気を震わせる。
ミミが震える。
「ご主人様……あれ……もう、別物ッスよ……
魔導核じゃなくて……“なにかの卵”ッス……」
Ⅲ――偽ルイザードの遺したもの
竜核の前には、砕けた仮面――偽ルイザードの残骸が落ちていた。
ノクトが拾い上げる。
「これは……偽ルイザードの“制御核”……?
でも、中身が空っぽ……。
普通、複製体は核が壊れたら崩壊するはずなのに……」
リオンが眉をひそめる。
「つまり……誰かが“偽を上回る偽”を作っていたということか?」
ナナシは残骸を見る。
血のような黒い液体が仮面の裏からポタポタと滴り落ちる。
(……あいつは“本物の記憶”を持っていた。
こんな複製、ただの影ができるものじゃない……)
竜核の前で足が止まった。
胸が痛む。
誰かの声がする。
――ナナシ。
――ナナシ。
――やっと来てくれた。
(……誰だ……?
なんで……俺の名前を……)
竜核中心から、黒い影がゆっくりと浮かび上がった。
人影。
だが輪郭が溶けている。
プルリが叫ぶ。
「だめ……! あれ……危険……!!
あれは……竜核の“影”が固まったもの……!
人じゃ、ない……!」
影はナナシのほうを見る。
そして――笑った。
声は、驚くほど優しい。
――君だよ、ナナシ。
やっと……会えたね。
ナナシの指が微かに震えた。
「……俺を……知ってるのか?」
影は頷く。
――もちろん。
君の名前は、僕と同じだから。
エレナがナナシの腕を掴む。
「ナナシ、聞いちゃだめ!
あなたの名前を利用しようとしてる……!」
影はそれを否定するでもなく、ただ微笑む。
――返してほしいだけだよ。
君が“忘れた本当の名前”を。
それを返してくれれば、君は――
そこで竜核が爆ぜた。
黒い光が影を取り込み、空間が震える。
――――“本来の姿”に戻れる。
その瞬間、王城外で異変が起きた。
黒竜脈が一瞬収縮し――
次の鼓動で、王都全域にまで一気に広がる。
防衛線の兵士たちが叫ぶ。
「黒竜脈が……拡大している!!
城壁を越えるぞ!!」
空も割れた。
黒い薄膜が雲を覆い、“空そのものが暗黒化”していく。
竜災観測員が震える。
「こ、これは……等級が……計測不能……!?
歴史上前例のない……“黒核暴走”です!!」
その頃、崩れた上層を踏破しながらレイヴンは一枚の石版を見下ろしていた。
「……全部、ここに書いてあったわけだ」
彼の目は憤りに濡れていた。
「ナナシ……君は生まれたときから“計画の一部”に組み込まれていた。
王家は君を……“新しい世界の核”にするつもりだった……!」
彼は走り出す。
「間に合え……!
これ以上、記憶を奪われたら……!」
黒羽が舞い、レイヴンの姿が闇へ消えた。
竜核中心で、影はナナシの胸に手を伸ばす。
――返してよ、ナナシ。
君の“真名”を。
それがないと……僕は生まれられないんだ。
ナナシは後ずさる。
「……やめろ……!」
影は優しく微笑む。
――やめないよ。
僕は君だから。
君が僕で。
僕たちは――ひとつになる。
黒い光が爆ぜた。
エレナが絶叫する。
「ナナシ!!」
ナナシの視界が白く染まる。
胸の奥――
“何かが剝がれ落ちる”ような感覚がした。
(……俺……は……)
――おかえり。“僕”
その囁きが、さらなる混沌を呼び覚ましていく。
最後まで読んでくださり、心から感謝いたします!
次話もぜひお楽しみに!
また次のお話でお会いしましょう。
引き続き『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』
略して『ナナクラ』をよろしくお願いいたします(^^)/




