第80話 「覇雷獅王の裁定と祝福」
お疲れ様です!
【影葬の追跡】の激闘を終えた、無銘の牙の面々。
エンジン全開で戦いに挑んだ【無銘の牙」たちの前に現れた【バリシャ】!!
彼らが戦いの後、何を思うのか。
こうご期待ください。
また、頭の中でイメージしながら読み進めると物語とシンクロして面白いですよ(^^♪
最弱と呼ばれた従魔たちがどこまで進化するのか――
牙の刻が、これからも続いていきます!
大気を裂く雷鳴の尾が消え、戦場に静寂が訪れた。
ただ一つ、黄金の鬣を揺らしながら立つ【覇雷獅王バリシャ】だけが、天地を圧する存在感を放っている。
その獅子の瞳は、今や怒りではなく、確かな悦びに燃えていた。
彼はゆるりと前へ進み出る。大地が軋む。
◆ ◆ ◆
そして、その巨体が【無銘の牙】の面々の前で立ち止まった。
「……よくぞ、耐え抜いた」
低く響く声は、稲妻のように彼らの胸奥を打ち抜いた。
異端と蔑まれ、群れの外れ者と見なされ続けた仲間たちにとって、それは初めて与えられる「真なる承認」だった。
バリシャはまず、半透明に震える小さな体――スライムのプルリへと近づく。
「粘り、震え、怯えながらも前へ出るその心……儂は見逃さん。
臆病は恥ではない。臆病を超えて進んだ一歩こそ、真の勇。
プルリ――その律動、群れを支える鼓動となれ」
黄金の鬣から一条の雷が流れ、プルリの右肩にあたる部位へと刻まれる。
小さな身体がぶるぶると揺れたが、次の瞬間、光は柔らかな温もりとなり、彼を包んだ。
「……あ……あったかい……!」
プルリの声は震えながらも、確かな歓喜に満ちていた。
次に、バリシャの視線がコボルトのミミへと落ちる。
怯えを押し隠すように耳を立てる彼女に、獅子王は牙を覗かせた。
「小さき牙よ。
戦場で吠え続けたその声、仲間を繋ぐ鎖となった。
群れを率いるは血筋に非ず――心に宿した“吠え”だ」
稲妻が閃き、ミミの左耳へと刻印が走った。
雷の印は耳飾りのように光を宿し、彼女の瞳を強い決意で染め上げた。
「わ、わたし……! 絶対、負けない……!!」
その声はもはや弱き仔犬ではなく、仲間を率いる者の響きだった。
続いて、リザードのルルカに視線が移る。
鱗の下に潜む熱を見抜かれ、彼女は息を呑む。
「冷き鱗に潜む炎を、儂は視た。
冷静さは刃、激情は炎――二つを併せ持つ者こそ真の戦士。
その均衡を崩すな。お主こそ、群れの“矛と盾”なり」
稲光が走り、ルルカの長き尾の先へと刻印が灯る。
尻尾全体に雷紋が奔り、静かに収束してゆく。
「……ワタシの中の熱も、冷たさも……全部、力に変えればいいんだ」
その言葉には揺らぎのない覚悟が宿っていた。
そして最後に――バリシャの視線が、無銘の主であるナナシに注がれる。
「さて、お主にも祝福を――」
と、その巨獣が言いかけた瞬間、獅子の黄金の眼が見開かれた。
沈黙。
次の瞬間、大地を揺らす哄笑が迸った。
「――――ん? ……うん? これは……まさか……!!
おいおいおいおい! マジかッ!! フハハハハハハハッ!!」
天すら震わせる雷鳴の笑いに、周囲の者たちは耳を押さえ、戦慄した。
しかしバリシャの眼は真っ直ぐにナナシを射抜き、愉悦と驚愕で爛々と輝いていた。
「ナナシと言ったか? ……お主、まだ進化をもう一段、残しているな?」
ナナシは一瞬、目を細める。
「ん? ああ……そうだが、それがどうした?」
そのあまりに素っ気ない返答に、バリシャは更に大笑する。
「そうか! それを聞ければ十分よ!
ナナシよ……お主……いや、今は止めておこう。
(まさか……我と同じ“覇核”を有していようとは……ッ! これは、もしかしたら……十三番目に……! クククククッ♬ 愉しみが増えたわ!)」
覇雷獅王は笑みを収めると、稲妻を手繰り寄せ、ナナシの胸奥へと雷を刻む。
「授けよう――《雷禍恩寵》を」
雷撃の光柱が炸裂し、ナナシの全身を貫いた。
その光を直視した弱き者は次々と気絶し、強者すらも圧に震え、膝を折る。
ナナシはただ、仲間と共にその輝きを受け止めていた。
胸に刻まれる灼熱の紋章――それは「異端」を越え、「伝説に認められた者」の証だった。
◆ ◆ ◆
こうして、【無銘の牙】は一人ひとりが雷の刻印を得て、ただの外れ者から「覇雷獅王に認められし牙」へと至ったのである。
――それぞれの成長へとつながる鍵を胸に抱きながら。
――続く――
こまでお読みいただきありがとうございます!
現十二王座、第三位。
雷牙の咆哮――《覇雷獅王バリシャ》の威圧半端ないですね!
ナナシ達はこの先、どうなるのか。
さらに加速する“牙の伝説”をどうぞお楽しみに!
次話の投稿は、明日夕方17時10分の予定です!('ω')ノ
引き続き『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』
略して『ナナクラ』をよろしくお願いいたします(^^)/