第77話 「雷帝の審判と仲間たちの呼吸」
お疲れ様です!
【影葬の追跡】を、
エンジン全開で戦いに挑んだ【無銘の牙」たちの前に現れた影!!
ついに、▽【刻環十二聖王座〈アルザ・セイ=クリオス〉】▽
刻環第三位:【雷牙の咆哮バリシャ】の声と影が現れました!!
彼らが戦いの後、何を思うのか。
こうご期待ください。
また、頭の中でイメージしながら読み進めると物語とシンクロして面白いですよ(^^♪
最弱と呼ばれた従魔たちがどこまで進化するのか――
牙の刻が、これからも続いていきます!
大地は深く震えていた。
雷鳴が天と地を繋ぐ鎖のように幾筋も降り注ぎ、空間そのものが引き裂かれる。
「沈め――」
その一言が放たれた直後、リーヴァスは地を踏みしめたまま顔を上げたが、次の瞬間、空気そのものが鉛へと変わったかのような圧が襲い掛かった。
「ぐァァァァァァ……っ!」
身体が制御不能に叩きつけられ、地面へと激突。砂煙を巻き上げ、彼女は体を地面に叩きつけられ、そのまま突っ伏す。
その重圧は周囲へも伝播した。
ぷるぷると震えるだけで形を保っていたスライムのプルリは、まるで潰れたゼリーのように地へ広がり、震えながら声にならない呻きを漏らす。
「ひ、ひゃうぅ……っ!」
コボルトのミミも耳を伏せ、全身を地に押しつけられる。小さな体はぺたりと沈み、地面に爪を立てても全く動けなかった。
リザードのルルカも、尻尾を叩きつけて抗おうとしたが、重力の嵐に勝てず――膝を折り、その爬虫類の瞳が地面へと落ちた。
「ぐ……ふ、ふざけるな……!」
ナナシだけは片膝を地につきながらも、なんとか前を睨み据える。だが額には滝のような汗が伝い、その呼吸は乱れていた。
「これが……覇威……っ、雷帝の圧か……!」
雷雲はますます厚みを増し、戦場は一瞬で“静寂の牢獄”に変わる。誰もが動けぬまま、ただ大地を震わせる轟雷の予兆に耳をすますしかなかった。
――その静寂を切り裂くのは、次なる審判。
バリシャの眼光が再び煌めいた瞬間、世界そのものが息を潜める。
地面に押し潰されるように沈む仲間たち。
雷帝バリシャの覇威は、ただそこに在るだけで大地を砕き、命を屈服させる圧を帯びていた。
――だが、沈黙の中に、わずかな「震え」が芽生える。
「ぷ、ぷるり……っ……まだ……」
地に広がったスライムのプルリが、苦しげに声を絞り出す。
ゼリー状の体を必死に震わせると、その震動が周囲に小さな波紋を伝えた。
「ひゃ……ひゃいっ……!」
隣で突っ伏していたミミが、その波紋を感じて顔を上げる。コボルト特有の敏感な耳がプルリの震動に共鳴し、わずかに体が軽くなった。その違和感を誰よりも早く見抜いたのは、今も戦場に目をくまなく走らせているナナシであった。
「ミミ……! その……今の、リズム……!」
ナナシが地に膝を突きながらも、地面に大剣を突き立てて震える声を絞る。
「波を……俺の剣と共鳴させろ……!」
「わ、わかんないけど……こう?」
ミミが吠えるように声を張り上げる。短い鳴き声が空気を震わせ、プルリの震動と共鳴した。
――刹那。
地にのしかかる重圧が、ほんのわずかだが揺らいだ。
「……ここだ!」
ナナシが叫ぶ。彼は片膝をついたまま、震える体を叩き起こし、地を蹴った。
雷の圧に押されながらも、ほんの隙間に拳を突き立てる。
「お前の覇威だろうが……仲間の声で、揺らせる……!」
その拳に呼応するように、ルルカが尾を叩きつけ、ミミが吠え、プルリが波を放つ。
三者三様の震えが、やがて一つの“リズム”となって重圧を打ち破った。
「ほう……っ」
バリシャの眼光がわずかに歓喜の色をはらんだ。
沈黙と圧制を敷いた戦場に、初めて“意志の響き”が広がったのだ。
リーヴァスもその振動に揺さぶられ、重圧に沈んだ身体を震わせて持ち上げる。
「……くっ……ああ……そうか。これが……久しく忘れていた、我の……!」
天地を裂く雷鳴の中で、仲間たちの呼吸が一つに繋がった瞬間だった。
――続く――
ここまでお読みいただきありがとうございます!
現十二王座、第三位。
雷牙の咆哮――《覇雷獅王バリシャ》の威圧半端ないですね!
ナナシ達はこの先、どうなるのか。
さらに加速する“牙の伝説”をどうぞお楽しみに!
次話の投稿は、明日夕方17時10分の予定です!('ω')ノ
引き続き『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』
略して『ナナクラ』をよろしくお願いいたします(^^)/