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『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』  作者: 焼豚の神!
第2章:『雷爪の狩場 ―覇雷獅王との邂逅―』
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第76話 「雷牙の咆哮 ― 王座の裁断」

おはようございます!


【影葬の追跡シャドウ・レクイエム】を、

エンジン全開で戦いに挑んだ【無銘の牙」たちの前に現れた影!!


ついに、▽【刻環十二聖王座〈アルザ・セイ=クリオス〉】▽

刻環アルザ第三位:【雷牙の咆哮バリシャ】の声と影が現れました!!



彼らが戦いの後、何を思うのか。


こうご期待ください。


また、頭の中でイメージしながら読み進めると物語とシンクロして面白いですよ(^^♪


最弱と呼ばれた従魔たちがどこまで進化するのか――


牙の刻が、これからも続いていきます!

天地を裂く咆哮は、ただの声ではなかった。

それは“覇威”。

現十二王座の三番目に座す《雷牙の咆哮バリシャ》のスキル――その声を聞いた瞬間、生ける全てが意志を封じられる絶対の支配力。


◆ ◆ ◆


「……ぐっ……!」

ナナシは必死に身体を動かそうとする。だが、全身の筋肉は石に変えられたかのように硬直していた。


「ぷるる……! ボ、ボクの体……動かない……!」

プルリも形を崩しかけながら、かろうじて声だけを発する。


ミミの耳は後ろへ伏せ、牙は鳴動しているが、一歩も踏み出せない。

ルルカに至っては、握った槍が震えながらも地面に縫い付けられたように動かない。


「こ、これは……ただの威圧じゃない……!」

ナナシが苦悶しながらつぶやいた。




だが、硬直しているのは無銘の牙だけではなかった。

あの《白雷の大銀狼》ヴァルグでさえ、吠えかけた顎を止められ、咆哮が喉奥でせき止められている。


《忘逆の魔影》リーヴァスに至っては、黒雷を纏った巨体のまま、その蹄を大地に打ちつけられたかのように一歩も動けなかった。


「……ま、まさか……この力……!」

リーヴァスの瞳が恐怖に揺れる。




「――お前ら、これ以上牙を交わすことは許さん。」


その声が再び轟く。

天を裂く雷鳴と共に、戦場の上空に降臨する影――。


黄金の鬣を持ち、雷を纏った獅子の巨影が空を覆う。

その姿は実体とも幻影ともつかず、だが見る者全てに「王」としての威厳を植え付けた。


現十二王座、第三位。

雷牙の咆哮――《覇雷獅王バリシャ》。


「――やれやれ、お前ら……。ここいらで牙のぶつけ合いは一旦ストップだ。

……“筋”通さん真似、俺ぁ、嫌いなんだ」



◆ ◆ ◆




「……バ、バリシャ様……!」

ヴァルグの巨腕が震えた。獣王子ですら膝を折りそうになるほどの威圧。

「この場を荒らしましたこと……誠に、申し訳ございません……!」


「なぜ……なぜこのような場に……!」

リーヴァスも雷に覆われた牙を軋ませるが、声色には確かな敬意が宿る。

「我々の小競り合いにまで……御身を煩わせてしまうとは……」



「理由を問うか?」

声色はあくまで落ち着き払っている。けれど、背後には世界を縛る覇威が滲み出ていた。


「ヴァルから、沙汰は聞いていたから、「影葬」の許可を出したが、ち~とばかし、お前らやりすぎだと思わんか。二牙が本気で暴れて、現世を巻き込む……。地形すらも変えて。これは、掟に反する大馬鹿やろ? わかっとるだろうな?」


リーヴァスが慌てて声を絞り出す。

「……掟、承知の上……! ただ、私は己の存在を示したかっただけで……!」


「ほぉん?」

バリシャの眼が細まり、口元がわずかに笑む。

「“証明”ねぇ……ええ響きや。けどなァ――」


声が一瞬で低く沈む。

「自分の虚しさ埋めるために世界巻き込むんは、ただの不義理やろがァ」


その言葉に、リーヴァスの毛が逆立つ。

「……掟、ですか。……いえ、もちろん重々承知しております。ただ……私は……己の存在を、示したかっただけにございます……!」


「証明だと?」

バリシャの眼が冷光を帯びる。

「己の空虚を埋めるために世界を巻き込み、無銘を試す……それを証明と呼ぶのか、お前は。」




ナナシは硬直したまま、唇を噛んでいた。

(……こいつは、俺たちよりも遥か上の存在……! この戦場そのものを裁こうとしている……!)


心臓が軋む。だが、わずかに――ほんのわずかに、硬直が解ける感覚があった。覇威の影響を振り払おうとする意思が、ナナシの中で燃え上がっている。


「くっ……俺たちは……戦って……きた……! 名もなき牙でも、ここまで来たんだ……!」


声を振り絞る。


その小さな叫びに、プルリの瞳が震え、ミミが牙を鳴らし、ルルカが槍を握り直した。




バリシャは一瞥を彼らへ投げた。

「あ?あぁ、小牙(しょうが)どもよ……。よくぞここまで耐えたな。確か、……無銘の牙と言ったか。身内が迷惑をかけたな。許せ。お前たちの奮闘は確かに見届けた。だが――この戦は、ここで裁断する」


「お待ちくださいませッ!」

リーヴァスが吠える。だが、その声音は敬語に徹していた。


「バリシャ様! どうか、今一度……この身の価値を……証明する機会を……!」


「……我が獣性を……ここで途絶えるつもりはございません……!」

リーヴァスが低く唸る。完全に頭を垂れるように、謙譲の声音で訴えた。



「ははッ……まだ言うか」


空気が裂ける。

バリシャの眼光は両陣営を一望し、その覇威で再び圧を強めた。


「沈め」


その一言に、声とは思えぬ重みが宿った。

瞬間――大地そのものが沈み込むかのような重圧が戦場全体を覆い尽くす。



「……ッぐぅぅぅああああああッ!」

黒雷を纏ったリーヴァスの巨体が、押し潰されるようにして地へ叩き伏せられた。


蹄が砕け、大地が陥没するほどの衝撃。地響きと共に、彼の体は重圧に耐え切れず、突っ伏したまま動けなくなる。



その余波は戦場全域に広がった。

「ぷるる……! つ、潰れる……っ!」

スライムのプルリが平たく伸ばされ、地面に張り付くように押し潰される。


「が、がぁぁ……!」

コボルトのミミも両手両膝をつき、牙を食いしばりながら地面に突っ伏す。


「……っくぅ……!」

リザードのルルカも槍を支えに必死に踏ん張るが、重圧に押され、地に膝を沈められていく。


「……ぐっ……!」

ナナシもまた、全身を押し潰される感覚に顔を歪め、耐え切れず片膝を大地につけた。


骨が軋み、肺が押し潰されるような圧迫感。頭上の空そのものが落ちてきたかのような重さが、全員を飲み込んでいく。


――それはただの一言。

だが、王の覇威を帯びたその一声は、世界を支配する暴威に等しかった。





◆ ◆ ◆



――その時だった。


ナナシの心に、不思議な感覚が走った。

(……まだ……終われない……! ここで終わらせちゃ、駄目だ……!)


その意思に呼応するかのように、プルリの身体が光を放ち、ミミの刃が震え、ルルカの槍に青白い雷が宿った。


「ご主人様……!」

「まだ……!」

「ワタシたちは……!」


小さな光――だが確かに、その輝きはバリシャの覇威の闇に抗う“兆し”となった。


バリシャの眼がわずかに細められる。

「……ほう。まだ立つか」


雷鳴が空を走り、次なる局面の幕が上がろうとしていた――。




――続く――


ここまでお読みいただきありがとうございます!


現十二王座、第三位。

雷牙の咆哮――《覇雷獅王バリシャ》の威圧半端ないですね!


ナナシ達はこの先、どうなるのか。


さらに加速する“牙の伝説”をどうぞお楽しみに!


次話の投稿は、本日夕方17時10分の予定です!('ω')ノ


引き続き『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』

略して『ナナクラ』をよろしくお願いいたします(^^)/

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