第75話 「雷嵐の綻び――絶望を超えて、兆しは灯る」
お疲れ様です!
【影葬の追跡】も佳境も佳境ッ!
エンジン全開で戦いに挑んでいる【無銘の牙」たち!!
彼らの戦いもついに終盤戦へと向かっています!
「影葬の追跡」開始そうそうお互いで高度な知能戦が繰り広げられております!
二の牙の挑発に乗らず、【無銘の牙】の面々はやつを出し抜くことができるのか!!!
彼らがどこまで「一の牙」&「二の牙」に己の牙を突き立てることができるのか!!!
こうご期待ください!!!
また、頭の中でイメージしながら読み進めると物語とシンクロして面白いですよ(^^♪
最弱と呼ばれた従魔たちがどこまで進化するのか――
牙の刻が、これからも続いていきます!
大地は砕け、天空は黒雷に覆われ、戦場はもはや世界の終わりを示す幻影のように染め上げられていた。
その中心に立つは――二つの「牙」。
一の牙、《白雷》ヴァルグ・ゼオグレイン。
二の牙、《黒雷》リーヴァス・オブリビオン。
二頭の巨獣が咆哮するだけで、周囲の岩山は粉砕し、空間そのものが振動する。
◆ ◆ ◆
「これ以上の長期戦は――体が持たないよ……!」
ルルカが槍を支えながら息を切らす。鱗は半ば剥がれ落ち、尾の先も血に濡れている。
「ぷるるっ……! でも、まだ……!」
プルリは散らばりそうな身体を必死にまとめ上げ、防壁を再生成する。
「やるしかないよ……!」
ミミは牙を食いしばり、傷だらけの手で二本の刃を握り直した。
そして――ナナシ。
彼の眼は、燃えていた。
絶望を超えた先にわずかに輝く「隙」を、彼だけが見抜いている。
「無銘の小牙どもよッ!」
雷を纏ったリーヴァスが、人の姿を捨てた黒き猪の姿で吠える。
「貴様らがどれほど足掻こうとも、この雷嵐の前に道はない! 全ては忘却に沈め!」
同時に、ヴァルグが巨大な顎を開き咆哮の準備に入る。
「我が咆哮に耐えられるものなら耐えて魅せよッ! この一撃で、【影葬の追跡】も終幕だッ!!影に沈み滅びるか、生き残り己の牙を指し示すか!!
小さき挑戦者たちの底力を見せてみろッ!!!」
ガァァァァァァァァ!!
二牙が放つ全力の陣――黒雷と獣王の咆哮が重なり合い、天地を覆い尽くす。
「――《黒雷轟嵐》ッ!!」
「――《獣神滅界衝》ッ!!」
世界が引き裂かれる。
光と闇が渦を巻き、ただその場に立つだけで全身が砕けそうな衝撃波。
だが――。
その一瞬、ナナシの視線が閃光の奥に「ほころび」を見つけた。
「――今だッ!」
プルリが前へ躍り出る。
「ぷるるるるるッ! 最大火力ッ!!!――《無窮水障壁》ッ!!」
彼女の身体が膨張を始め、鉄色へとボディーを変色し彼女自身が盾となり、黒雷の奔流をわずかに逸らす。
その隙を裂くように、ミミが跳んだ。
「見えたッ!――《迅雷双牙斬》ッ!」
雷の幕を裂く二閃が走り、リーヴァスの肩を深く抉る。
「貴様ァァァァァァ……!」
リーヴァスの眼が血走る。だが止めさせぬ。
続いてルルカが槍を構えた。
「竜鱗――崩れても、なお立ち続ける! ――《穿雷破槍》ッ!」
青白い雷槍がヴァルグの咆哮に突き立ち、衝撃の均衡をわずかに崩す。
「ここだッ……フゥゥゥゥゥゥ!!!!」
ナナシが声を張り上げ、両の手を広げた。
彼の背後に浮かぶのは、仲間たちの力が集約された魔方陣。
スライムの柔軟、コボルトの俊敏、リザードの剛槍――全てを統合した“無銘”の象徴。
「――《牙連鎖・無銘陣》!」
輝きが弾け、三者の技が連動し、一の牙と二の牙の絶対陣を押し返す。
◆ ◆ ◆
「なに……!?」
リーヴァスの瞳が揺れる。
「この力……名もなき牙ごときが……我らを凌駕するだと!?」
「そうだ……!」ナナシは叫んだ。
「名は無い。だが、絆と意思はあるッ。
俺たちはただの牙じゃない――【無銘】だからこそ、あらゆる“運命”すらも断ち切る!」
ルルカが槍を突き上げ、ミミが牙を剥き、プルリが盾を広げる。
仲間の全力がひとつに繋がる。
戦場が震えた。
――確かに、逆転の兆しが生まれた。
だが、その兆しを見逃すほど二牙は甘くない。
リーヴァスが黒雷を迸らせる。
「ならば――これが本当の最後だッ!」
同時に、ナナシたちも最後の力を振り絞る。
「全員――放てッ!!」
一牙の咆哮、二牙の雷嵐、そして無銘の牙の連撃。
全ての力が交錯し、世界を砕かんとする「ラストの一撃」が今まさに放たれようとした、その瞬間――。
◆ ◆ ◆
――「そこまでだッ!!!」
天地を切り裂くような声が、天上から轟いた。
その声音を耳にした瞬間、全員の身体が硬直する。
声に宿る“威”は、ただの威圧ではない。
生けるものすべての心身を縛る“覇威”。
「なに?!――っ、動け……ない……!」
ミミが歯を食いしばりながら呻く。
ルルカの槍も、プルリの盾も、ナナシの足も、一瞬にして凍りついた。
リーヴァスもヴァルグも、同じく動きを止めている。
戦場を覆う絶対の支配――その声の主は、ただひとり。
「まさか……貴方様が何故現世に!?!……このプレッシャーは…………間違いないッ………………。」
ヴァルグが一言。
「雷牙の咆哮、……バリシャ様……!」
震える声で名を口にした。
現十二王座、第三位。
その名を耳にした瞬間、戦場は新たな段階へと突入していく――。
――続く――
ここまでお読みいただきありがとうございます!
ついに、▽【刻環十二聖王座〈アルザ・セイ=クリオス〉】▽
刻環第三位:【雷牙の咆哮バリシャ】の声と影が現れました!!
さらに加速する“牙の伝説”をどうぞお楽しみに!
次話の投稿は、明日朝方6時30分の予定です!('ω')ノ
引き続き『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』
略して『ナナクラ』をよろしくお願いいたします(^^)/