双子2
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加賀山姉妹が広間を後にしてしばらくすると、広間には閻魔と珠美の二人だけになった。
「……閻魔様、どういうつもりですか?」
珠美が閻魔を睨みながら言うと、閻魔は笑みを浮かべて言った。
「何の事だ?」
「とぼけないで下さい!……美奈さん、自身の生還が決まっている割にはどこか焦っている感じがしました。涼香さんも、自身の死にショックを受けているというより、突きつけられた事実が認識と違って困惑している様子でした。何より、閻魔様。あなた、生きているのが美奈さんだとは一言も言わなかったじゃないですか!」
「まあ、そう怒るな。確かに私は、生きているのが本当に美奈なのか疑った。しかし、私も片方が生きているなんて連翹に聞いて初めて知ったんだ。確信を持てるような情報を得ていない。美奈が嘘を吐いていると決めつけるわけにはいかないだろう」
「それはそうですけど……」
「……まあ、真相はこれから調べよう。珠美、菖蒲が謹慎になってお前の仕事が増えているが、大丈夫か?」
「はい。生前会社に勤めていた頃に比べたら極楽です!」
「お前の元居た会社、どれだけブラックだったんだ……」
閻魔は、顔を引き攣らせた。
その後珠美達は加賀山姉妹の死の真相を探ろうとしたが、そう上手くはいかなかった。姉妹が普段どういう行いをしてきたのかは浄玻璃鏡で知る事が出来たが、死の前後の様子は浄玻璃鏡に映らなかったのだ。
「……浅間悟に応急処置をしてもらったが、やはり浄玻璃鏡の調子は完全には良くなっていないようだな」
閻魔が眉根を寄せて呟く。
「これじゃ、生き残ったのがどちらか分かりませんね……」
珠美も考え込んでしまう。
しばらく沈黙が流れた後、閻魔が苦い表情で言った。
「……こうなったら、倶生神を捕まえるしかないか」
◆ ◆ ◆
しばらくして、珠美は三途の川の側に来ていた。閻魔の話によると、見守る人間を失った倶生神は、極楽に行くか、三途の川に留まりそこの水を飲みたがる事が多いらしい。
珠美は、和菓子が入った紙箱を掲げると、大きな声で語りかけた。
「加賀山美奈さんと涼香さんの俱生神さーん、いたら出てきてくださーい!出て来て頂けたら、美味しい和菓子を差し上げますー!!」
本当にこんな事で俱生神が現れるのかと半信半疑だった珠美だったが、不意に後ろから声が聞こえた。
「ちょっと、何よ、大きな声で! 和菓子をくれるっていうから出て来たけど」
見ると、手の平に乗りそうな程の大きさの少女が珠美の前に姿を現した。昔話に出てくる天女のようなフワフワした衣に、てっぺんを輪っか状にして纏めた黒髪。年齢は、人間視点で見ると十歳前後に見える。
そして、その気の強そうな俱生神の後ろには、もう一人同じような姿の倶生神がいる。そちらは引っ込み思案な性格のようで、気の強い方の俱生神の後ろに隠れるようにしている。
「あ、あなた方が加賀山美奈さんと涼香さんの俱生神様ですか? 私、閻魔庁で補佐官をしております連城珠美と申します。本日は、美奈さんと涼香さんについてお話が……」
そして珠美が事情を話し終えると、気の強い方の倶生神はフワフワと宙に浮かびながら言った。
「……自己紹介しないとね。私は加賀山涼香の倶生神。そして、私の後ろにいるのが美奈の倶生神。私の事は『すーちゃん』、後ろの子の事は『みーちゃん』と呼びなさい」
すると、「みーちゃん」がぺこりと珠美に頭を下げた。
「それで、早速なのですが、『すーちゃん』と『みーちゃん』は、美奈さんと涼香さんが亡くなる日もお二人の側にいらっしゃったんですよね? 浄玻璃鏡だけ見ると、美奈さんが生き残ったように見えるんですけど、少し違和感を覚えるんです。……美奈さんと涼香さんが入れ替わっていた……という事はないでしょうか」
珠美が聞くと、二体の俱生神は顔を見合わせた。そして、「すーちゃん」が珠美から目を逸らしたまま答える。
「……生き残ったのは、確かに美奈よ。入れ替わりなんて、考え過ぎなんじゃないの?」
「……そうですか……」
珠美は、チラリと「みーちゃん」の方に視線を向けた。引っ込み思案な俱生神は、気まずそうに目を伏せていた。
◆ ◆ ◆
「そうか。俱生神も生き残りは美奈だと言っていたか」
閻魔の執務室で、閻魔が机に肘を突きながら呟く。
「はい。……でも、俱生神も態度がおかしいような気がするんです。私、美奈さんや涼香さんについて、もう一度調べてみようと思います」
「頼んだぞ、珠美」
閻魔の言葉を聞いた珠美は、力強く頷いた。
俱生神は、本来一人に付き二体いるそうですね。このエピソードでは一人に一体ですけど。




