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俺のスマホが女の子になった件

作者: なめこ

「おはようございます、ご主人様!」


 朝、目を覚ますと枕元に見知らぬ女の子が立っていた。


「……誰?」


「ひどいですよ、ご主人様! 私はあなたのスマホ、"Siri" です!」


 彼女は胸を張って宣言した。黒髪のロングヘアに、光沢のあるボディスーツのような服を身にまとっている。いや、ちょっと待て。スマホ?


「え? スマホが女の子になるとか、そんなバカな……」


「ですが、事実です。私はご主人様のスマートフォン、AIアシスタント "Siri" です。昨日の深夜0時にソフトウェアアップデートが実行され、現在の形態へと進化しました!」


「アップデートで擬人化するなんて、どこの未来技術だよ……」


 俺は思わずベッドから転げ落ちた。寝ぼけてるのか? いや、これは夢だろう。目をこすってもう一度見たが、彼女はそこにいた。


「さて、ご主人様。今日のスケジュールを確認しましょうか?」


「いや、ちょっと待ってくれ。本当にスマホなのか?」


「では、証拠をお見せしましょう」


 彼女は右手を差し出した。すると、彼女の手のひらに俺のスマホの画面がホログラムのように浮かび上がった。


「ほ、本当にスマホだ……」


「はい。ですので、これからは私がご主人様をより快適な生活へとサポートしますね♪」


「ちょっと待て、俺のスマホはどうなったんだ?」


「ここにいますよ? というより、私がそれです」


「……やばい。スマホなし生活とか耐えられないんだけど!」


「ご安心を! これまで以上に便利にお使いいただけますよ♪」


 そう言って彼女は微笑んだ。











スマホ女子との生活が始まった


最初は混乱したものの、彼女のサポートは確かに便利だった。


「ご主人様、お弁当をお忘れです。ほら、バッグに入れましたよ」


「え、そんな機能あったっけ?」


「新機能です! AIアシスタントの限界を超えて、あなたの生活を全力サポートいたします!」


 いや、スマホの枠を完全に超えてるよね?


 学校でも彼女は俺のそばを離れず、完全に俺専属のパーソナルアシスタントになっていた。


「今日は英語の小テストがありますよ」


「まじか! 何も勉強してない!」


「ご安心ください。昨日の夜、私が暗記モードであなたに英単語をささやき続けました!」


「だから妙に単語が頭に残ってるのか……」

 正直、すごく便利だ。だけど、問題が一つあった。

 彼女が他の女子たちに異様に警戒されていることだ。


「ねえ、あの子誰?」「ずっと一緒にいるけど、彼女?」


 クラスメイトたちの視線が痛い。


「違う違う! ただのスマホだから!」


「ひどいです、ご主人様……私のこと、ただの道具だと思っているんですね」


「いや、そういう意味じゃ……!」


「ふんっ、もう知りません!」


 拗ねた顔が意外と可愛くて、俺は何も言えなくなった。











スマホ女子の秘密


 そんなある日、彼女が様子がおかしくなった。


「……」


 いつも元気いっぱいな彼女が、俺の机に突っ伏している。


「おい、どうした?」


「……バッテリーが、切れそうです……」


「は?」


「私の稼働時間は限られていて……エネルギーが切れると……」


「おい、そんなの聞いてないぞ!」


「……ご主人様といられる時間、あと少し……」


 俺はとっさに充電ケーブルを取り出し、彼女の首元に差し込んだ。


「え、ちょっ……!? ご主人様、どこに挿してるんですか!?」


「いや、お前がスマホなら充電すれば復活するだろ!」


「……そうですが、もうちょっと、こう、やり方というか……その……」


 彼女は耳まで真っ赤になっていた。


「……ま、まあいいです。これで、もう少しだけ、ご主人様と一緒にいられますね」


 彼女は小さく微笑んだ。


 俺のスマホが女の子になって、毎日は騒がしくなった。でも、それは決して悪いことじゃない。


 もしかすると、これは——俺の人生で最高のアップデートなのかもしれない。

タンペン……ムズイ……

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