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第3話:ヴィーナス登場!

 駐車場はマンションの地下にあった。

 ゲートのシャッターが開き、車は駐車場に進んでいった。


「ここが彼女のマンションよ。さあ降りましょう。」


 車から降りた後、私達はエレベーターに乗り込んだ。

 とにかくあらゆる面でセキュリティーがすごかった。彼女の鍵がなければどこにも入れない仕組みになっていた。

 これだと芸能人でも人目につかなくてすむ。渚さんの話だと、ここには他にも何人か芸能人が住んでいるらしかった。


「彼女は我が社の利益の大部分を占めている女優なの。」

 ぐんぐん上昇するエレベーターの中で渚さんは言った。

「元はファッションモデルからスタートしてそちらでブレイクして、最近ドラマや映画やCMに出始めたんだけど演技派でね。あっという間にトップ女優の仲間入りを果たしたの。

 今は22歳なんだけど今年の国内映画祭で新人賞を総なめしたわ。」


 私はそれを聞いて(えっ?)と思った。

「えっ、それって・・まさか!」 

 思わず大声で叫んだ。


「まさか・・大沢可憐?」

 渚さんは意外そうな顔をした。

「あら知ってるの?芸能関係には興味なさそうだったから知らないかと思ってたわ・・。」


 知らないも何も、今国内で最も旬な女優だ。テレビさえつけていれば一日中お目にかかる事になる。

 一番驚いたのは父の芸能プロダクション・・『倉田プロダクション』に、そんな大物が所属していた事だ。

 そういえば父はここ数年、深夜以外ほとんど家に帰ってこない。

 おかげで私は好き放題できていたのが・・。


 そうなったのもここ5、6年のことだ。ちょうど彼女のデビューあたりと重なる。それより前は本当の弱小プロダクションで金銭面でピーピー言ってた気がする。

 家の内装も外装もいつの間にかどんどん豪華になっていて、数年前の我が家とは全く別物になっていた。

 そういえばしょっちゅうどこかしら工事をしていてうるさくて、通販で買った強力な耳栓をして部屋に引きこもってたっけ・・。


 そう考えると大沢可憐はまさに倉田プロダクションにとって、『金の卵』だったという事になる。

 これまでの私の、通常より・・ちょっとリッチな引きこもり生活も、彼女によって支えられていた事になるのだ。

 思わず彼女に会って両手を合わせて拝みたい気持ちになった。


「・・ここよ。」

 エレベーターの20階で降りてすぐ横の扉を指差しながら、渚さんはインターホンのベルを鳴らした。

「あまり人と会わないようにエレベーターの横の部屋にしたのよね。」

 それを聞き(へぇ。)と思っていると、扉がガチャリと開いた。






「・・・ーーーーーーーーーーっ!!」



 私は思わず息をのんだ。

 ・・ぱあぁぁという効果音とともに華やかな光がいっせいに放たれた気がした!


(・・まっ、まぶしい・・!)


 目の前には・・同じ人間とは思えないようなとてつもない美女が立っていた。

 ・・これを八頭身というのだろうか・・?

 身長は私と同じ170前後なのに顔の大きさも腰の位置も全然違う!

 ・・キュキュッとしまったメリハリボディーにミニスカートから伸びた足の美しい事・・。


 そして、顔・・! 

 「人形かっ!?」というような小さな顔は白く透き通るようで・・ぱっちり開いたビー玉のような大きな瞳がキラキラと輝いていた。

 すっきり通った鼻に薔薇色の形の良い唇・・。ふんわりとした長い髪は柔らかく巻かれていた。


 一番の特徴は『華』だった。

 まるで彼女の内側から見えない光が溢れて・・外に向かって一斉に放たれているみたいだった!


 見ている者の瞳を捕らえて離さない・・これは『魔力』だ。




(・・すっごっ!)


 目の前の人間の放つ輝きに私の目はだんだんちかちかしてきた。

 これが大沢可憐。国内のトップ女優。

 テレビの中でもその美しさは際立っていたが、こうして実物を見るとその美しさは半端じゃなかった。



(・・これが芸能人のオーラというものなのか。)

 私は口を半開きにして彼女を見ていた。

 彼女はそんな私を見てふわりと花のように笑った。


「こちらが社長の娘さんね?」

 私は思わず赤くなった。


「そうよ、倉田美月っていうの。事情は以前話した通りだからよろしくね?」

 渚さんがそう言うと彼女は優しく微笑みながらこくりと頷いた。


「・・さっ、入って。」

 そう言いながら私達二人を部屋の中に導いた。

 

 私は巨大ハリセンを頭部にくらった様な眩暈を感じながら・・彼女の部屋に入っていった。






















 

   

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