第24話:ヴィーナスの告白
今回はR15でお願いします。
色っぽい意味ではなく下品な意味でです・・。
マンションに戻るとリビングの隅には大量の紙袋が置かれていたー。
「あっ、渋沢さん買っといてくれたんだ~♪」
白いコートを脱ぎながら可憐さんが言った。
「・・渋沢さん・・?」
私が尋ねると、彼女はニッコリ笑って答えた。
「うん。ウチに毎日来てもらってる家政婦さんだよ? お部屋の掃除とか買い物とかしてもらってるんだ~。」
・・それを聞き、私は(・・アレ?)と、思った。
「・・えっ、でも私・・渚さんから可憐さんの「家政婦兼付き人」をするように言われてるんですけど・・。」
可憐さんは苦笑しながら言った。
「・・だからいいって。 家でも仕事をするなんて、はっきり言って無理だよ。
ただでさえ美月さんは、朝から晩まで私に付き添うから長時間労働だし・・。
他のマネージャーさん達は交替制で休みがあるからいいけど・・美月さんはたぶん・・ほとんど休みがないと思うよ?」
(な、ないんだ・・。休み・・。)
・・私は軽いショックを受けた。 ・・これは今までサボり続けてきた罰なのだろうか・・?
「だから家では普通にリラックスしてて? 今までお家でしてたみたいにね。
・・そうしないと美月さん、たぶん倒れちゃうよ~?」
可憐さんはそう言いながらエアコンのスイッチを入れた。
私はそれを聞き(本当にいいのかな?)と、不安になった。
でも確かに・・こんなに疲れた後で家事までやったらリアルに倒れそうだ・・。
「あと・・朝ごはんは私が作るから、美月さんはギリギリまで寝てていいからね?」
「・・えっ!?」
・・思わず叫んでしまった・・!
「な、何を言ってるんですか・・!? そ、それじゃあ・・あべこべじゃないですか・・!! 朝は私が作りますよ!」
いくらなんでもそれはあんまりだ・・! 私なんかより・・主役の可憐さんの方が数十倍疲れてるのに・・。
これじゃあ、どっちが「付き人」なんだか分からない。
彼女は「いいから、いいから。」と、私をなだめた。
「昨日も言ったけど、料理は私の趣味だから。 ・・もともと、毎日作ってたし。
変に思うかもしれないけれど・・お料理は私にとって、一つの”ストレス解消法”なのよ。
・・それとも私より美味しく作れる? そしたら譲ってあげてもいいけど~?」
彼女はそう言い、いじわるな顔でニヤリと笑ったー。
(・・それは、絶対ムリ・・。)
困った顔をしていると、彼女はアハハとおかしそうに笑った。
「・・まっ、気にしないでよ! ・・それよりそこの袋たちを開けてみて~?」
私は言われるままに、床に並べられた紙袋の一つを開けてみた。
その中にはバッグが入っていた。 ・・仕事に持っていけそうな、大きめの茶色のバックだー。
他の袋を見てみると・・3種類の様々な色のバッグと5足の革靴が入っていた。 他に下着や靴下、ストッキングもたくさん入っている。
「・・ちょっと、こっち来てみてよ~!」
気が付くと、いつの間にかいなくなっていた可憐さんが寝室から叫んでいた。
慌てて部屋に行ってみると、彼女は「見て見て~♪」と言いながら、嬉しそうに壁際のクローゼットを開けた。
・・そこには新品の洋服がズラリと並んでいたー。
どう見ても・・渚さんが持ってきた服じゃない・・。
「・・こ、これは・・?」
・・恐る恐る尋ねると・・
「うん! 今日渋沢さんに買っておいてもらったんだ~。
・・ここは美月さん専用のクローゼットだよ? 私のは向こうの衣装部屋にあるから。」
彼女はご機嫌な様子で答えた。
私は・・それらの服を手にとってみた。
どれも職場に着ていけそうな無難なものばかりだ・・。 ありがたい・・ありがたいけど・・・「数」が多すぎる!!
いったい何着あるのだ~~!??
「・・あの、ちなみにこの服達・・全部でいくらかかったんですか?」
「う~ん。 ・・八十万位かな・・?」
彼女は事も無げに言った。
「はっ・・はちじゅうまんーーー!??」
私は四方八方にツバをちらしながら叫んだ!!
「・・あの・・可憐さん・・。・・わ、私・・そんな持ち合わせは・・。」
私がしどろもどろに言うと、彼女はニッコリ笑って答えたー。
「うん。わかってる。 ・・そうねぇ・・ちょっとお財布出してみて?」
私は昨日、渚さんに届けてもらった財布を差し出したー。
朝に可憐さんのストッキング代を立て替えてたから・・残金は1万8950円。 ・・ちょっと恥ずかしい・・。
「・・じゃあ、この分頂くわ♪」
彼女はそう言い・・目にもとまらぬ速さで数枚のお札を抜き取った!
返された財布の中身を確認して・・私は泣きそうになった・・!!
(・・ああ~~!! お・・お札が一枚・・・千円しかない~~!!)
いっ・・1万7000円も、もってかれた~~!! あ・・ありえない・・。
「・・残りは私からの就職祝いよ♪」
彼女はそう言い私のお札を自分の財布にしまった。
(・・い、言えない・・。 80万円分もの洋服をもらっておいて・・「1万7000円返せ!」なんて・・!!)
泣きそうな顔をしていると、彼女はにっこり笑って言った。
「・・大丈夫っ! 美月さんの生活にお金なんてかけさせないから~。 まあ、まかせてよ♪」
(・・何をっ!?)
私は心の中で・・声無きツッコミをいれた・・。
・・でも、少しして・・なぜ彼女が、そういう『暴挙』に出たのか理解したー。
(・・私の”逃亡”を阻止するためだ・・。)
・・もし「2万」あれば・・私はここから”逃亡”できるー。 でも「2千円」じゃ、どこにも逃げれない。
・・交通費にすらならない。
おそらく・・昨日私をここに閉じ込めたのも・・逃亡を防ぐため。
(・・可憐さん。あなたは本当の・・『鬼』だー。)
狙った獲物は逃さない・・。 目的を達成するためなら・・手段を選ばない。
(・・とんでもない人に目をつけられたな・・。)
私は・・ガックリとうな垂れたー。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか・・彼女はニッコリ笑って言ったー。
「・・美月さん、お先にお風呂どうぞ~♪」
・・お風呂からあがると・・可憐さんはキッチンで、料理の食材らしきものを整理していたー。
テーブルの上には料理の入ったタッパーがたくさん積んであった。
「・・て、手伝います・・!」と言いながら駆け寄ると・・
「・・いいから、寝て? もう終わったから。」と拒まれたー。
「・・じゃあ、後片付けを・・。」と、腕まくりをすると・・
「食洗機があるから。」と言われて押し戻されたー。
・・そしてそのまま寝室に押し込まれそうになり、私は慌ててリビングの壁にへばりついた・・!!
「・・ち、ちょっと待って下さい・・!! ・・まさかこの中で眠れって言うんじゃないでしょうね・・!?」
そう言いながらじりじりと寝室の扉から離れる・・。
もう昨日のようには・・だまされないんだから! ーー絶対に!!
「・・えっ?・・そうよ? 一緒にベッドで寝よう?」
可憐さんがしれっとした顔で言ったー。
彼女のあまりに図々しさに・・私の頭の中では、脳の血管がブチッとキレる音がしたーー!!
「・・じっ、冗談は止めて下さいっーー!! ・・き、昨日の今日で何を言ってるんですかーー!?」
・・私は顔を真っ赤にして叫んだ・・! 怒りで全身がブルブルと震えている・・!!
・・慣れない大声で・・・クラリと眩暈がしたー。
「・・可憐さんが本当は「男性」だと知った以上・・絶対に、一緒になんか寝れません・・!!」
私は絞り出すような声で・・キッパリと告げたーー!
でも彼女は・・全く動じる事なく返してきたー。
「・・なんで・・? 私と「仲良くなりたい」って言ってたじゃない・・。 私の「子供」を生んでくれるってー。
・・まさか・・嘘なのーー?」
彼女の視線が鋭くなり・・私は昨日の「夜」の事を思い出し・・青ざめたー。
「・・で、でも・・『一年待つ』って言ったじゃないですか。 ・・「何もしない」って・・!!
なのに・・いい大人が一緒に寝たら・・まずいでしょ・・!?」
私は・・震える両手を握り締め、必死になって叫んだ・・! ・・絶対に・・折れてはいけない・・!!
「・・ああ・・。大丈夫よ・・。」
・・彼女はボソリと・・呟いたー。
「・・だ・・大丈夫って・・!!」
ーー私は・・またしてもムカついてきた・・! 何を根拠に「大丈夫」などと、のたまっているのかー!?
・・き、昨日・・人のこと襲ったくせにーー!!
・・いくら私に魅力がないからって・・もう騙されないよ!?
・・男性は一緒に寝ると・・相手が’年頃の女性’でさえあれば、たとえどんな相手でも「そういう気持ち」になるって・・何かで読んだ事あるんだから・・!!
そう思い、何か武器になりそうな物はないか・・辺りを見回したーー。
「・・だから・・『大丈夫』なんだって・・!」
ーー彼女はイラついた声で叫んだー。
「・・は・・?」
私はきょとんとした顔で彼女を見た・・。
可憐さんは・・私を見て苦笑した。
そして、下の方を指差し呟いたー。
「・・私。 女性には・・ココが反応しないのー。」
・・彼女の指差した方向を目で辿り・・・私は一瞬固まった。
「・・はああああああああああああああぁぁ~~~~~~~っっ!!??」
音響効果抜群の広いリビングには・・私の絶叫が・・響き渡っていたー。
直球ですみません。
しかも懲りずに・・次回はこの内容を広げるつもりです。(汗)