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第20話:女優・・大沢可憐の看板

 芸能界が舞台の話ですが、様々な面で現実と違う所があります。

 そもそも事務所の役職やマネージャーのつき方からしておかしいです。

 弱小プロダクションから一人だけ売れっ子がでるという設定なので、いろいろ変則的なしくみになっていると思ってください(笑)

 一応調べて書いてはいますが、なにぶん素人小説ですので、おかしい所は大目にみていただければありがたいです。 

 



 倉田プロダクションは通りのビルの五階にあったー。


 ビルの一階でエレベーターを待っている間、渚さんが私を見て言った。


「美月、お化粧はどうしたの? それと私が昨日指示しておいた服はどうしたの?」


 ギクリとして、おもわず可憐さんを見た・・。


「いや・・その・・。」


 私はしどろもどろに答えた。


「ちょっとあの服は私にはハードルが高い気がして・・。」


 それを聞いた渚さんは「・・まあいいわ。」と言い、軽くため息をついた。


「・・でも化粧はしなさい。 社会人女性の基本よ? ・・これ、自由に使っていいから・・。」


 彼女はそう言って、化粧ポーチらしき物を私に渡そうとした。



 その時・・。


「・・あっ・・!!」と可憐さんが叫んだー。


 私と渚さんは何事かと顔を見合わせた。


「・・ストッキングが伝線しちゃった! ・・美月さん、悪いけど・・この近くのコンビニで買って来てくれない?」


 そう言い、いつの間にか伝線していたストッキングを指差し、困った顔で笑った。


 それを聞いた渚さんが化粧ポーチを差し出す手を引っ込めた。


「・・そうね。 私と可憐は先に事務所に行ってるから買ってきてちょうだい。 このビルの斜め向かいのコンビニにあると思うわ。・・レシートは忘れずにもらって来てね?」


 渚さんがそう言うと、可憐さんが「メーカーはS社で、サイズはL~LL、色はヌードベージュね。」と付け加えた。


「・・事務所で待ってるから。 なるべく早くお願いね?」


 そう言うと、渚さんは可憐さんと一緒にエレベーターに乗り込んで行ってしまったー。


 ・・私は早足でビルの外に出ると、通りの向かいのコンビニエンスストアに駆け込んだ。


 指定された商品があったので、購入してビルに戻ったー。


 エレベーターに乗り込み五階に上がると、そのフロアで事務所を探した。


 長い廊下の一番奥に、『(株)倉田プロダクション』というプレートのついたドアがあったので、恐る恐る・・その扉を開けたー。



(・・わぁ・・。)


 私はドキドキしていたー。


(・・これが父の会社・・。)


 フロアはあまり広くなかった。 ・・学校の教室くらいだろうか? そこに、十個に満たないデスクが並べられている。


 ・・人は誰もいなかった。 時間は八時前だし当たり前か・・。



(・・渚さんと可憐さんはどこに行ったんだろう・・?)


 私はフロアを見渡した。


 広くはないが・・なんと言うか・・おしゃれだ。


 インテリアがセンスよく配置されている・・。 色彩も白が基調だが、清潔感があり・・なんとなくおしゃれだった。


 そういえば・・ここは芸能事務所と言っても、もともとモデル事務所なんだと渚さんが言ってたっけ。


 可憐さんもモデル出身だし、馨さんもファッションモデル。 他のタレントさんも、ほとんどモデルをやってるらしい。


 父の会社なのに、今まで父が何をやってるのかよく分かっていなかった。


 なんだかなぁ・・。 特に興味もなかったし。 母も生前・・父の仕事とか、二人の過去の事とか・・あまり話題にしなかったんだよね。


 まあ・・私が’そういう事’に興味を持つ前に母が死んじゃったっていうのが大きいんだけど・・。


 父とは会話らしい会話もほとんどしてこなかったしなぁ・・。


 そんな事を考えボーッとしていたら、「あの・・」と後ろから声がした。

  

 ギョッとしてヨロめきながら振り返ると・・そこに一人の青年が立っていたー。



 年齢は二十代半ばという所だろうか・・?

  

 身長は私と同じ位・・イヤ、少し高いか?


 細身でやや色白、切れ長の一重の瞳がスッキリとした印象を与えていたー。


 ・・細めの栗色の髪の毛は、短くサラサラしている。


 全体的に細身なので、やや頼りない感じがするが・・とにかく清潔感溢れる青年だったー。



「・・社長の娘さんの美月さんですよね? はじめまして、マネージャーの千葉です。」


 彼は意外に野太く重量感のある声でハキハキと挨拶すると、ニッコリ笑って右手を差し出してきたー。


 ・・つられて右手を差し出すと、彼はガッシリと握手をしてきたー。


 その手が意外に力強くて・・私は面喰(めんくら)ってしまった・・。


 見た目がほっそりしてるから、か弱い感じの人かと思っていたら・・どうやら違うらしい。


 なんと言うか、いろんな意味で・・見た目とギャップのある人だー。



 そもそも私は・・中学から、ほとんど人と接していなかった・・。


 ましてや、男性なんて・・私にとっては”宇宙人”並に未知の生物だったー。


 最近、性別不詳の・・本当の「未知の生物」と遭遇したばかりだが・・。


 ・・思わず赤くなっていると・・ガチャリと音がし、奥の扉から渚さんと可憐さんが出てきた。


 可憐さんの目が何かに釘付けになっていたので、その目線を辿って見ると・・私と千葉さんの握手の繋ぎ目に辿り着き、慌てて右手を振り払った・・!!

 


「千葉ちゃん、来てたのね!」


 渚さんがにこやかな顔で駆け寄ってきた。


「・・美月、彼はマネージャーの千葉克己(かつき)君、29歳。・・ちなみに独身でお嫁さん募集中よ~♪」



「・・な、渚さん! そこ強調しないで下さいよ~? ・・俺、なんかアセってるみたいじゃないですか~!!」

 

 千葉さんは顔を赤らめて困った顔をしていた。


 渚さんはおかしそうにニヤニヤしているー。



「・・でも千葉さん彼女いるよね? ・・女子大生だっけ?」


 可憐さんがつっこむと、渚さんがすぐさま切り返したー。


「いつも続かないで、すぐに別れちゃうじゃない。 ・・どうせ、すぐにフリーになるわよ!」


「・・そ、そんな不吉な事言わないで下さいよ・・!」


 千葉さんが叫ぶと、他の二人はアハハと笑った。



 私は彼らのやり取りを見て(へぇ・・)と思っていた。


 なんと言うか・・すごく雰囲気がいいな。 ・・職場って、もっとギスギスした所かと思ってた。


 ・・とりあえず、この「千葉さん」っていう人は、すごくいい人そう・・。(いじられキャラって感じだけど・・。)


 私は少し安心した。


(・・それにしても29歳・・。 1コ下か。 ・・もっと下かと思ってた・・。)


 細身の体と若々しい雰囲気が、彼の実年齢を若く見せていたー。



「可憐のマネージャーは他にも二人いて、ウチの会社では・・全部で「四人」のマネージャーが交替制で彼女を担当しているの。


 残りの二人は男女一人ずつよ。 ・・男性の方は今日の夕方に私と交替するし、女性の方は明日千葉ちゃんの代わりに入る事になるから。 ・・二人とも、会った時に紹介するわね?


 あと他の社員も・・美月の場合、可憐に’四六時中’付き添う事になるから、なかなか会えないと思うけど、機会があったら紹介するから。」


 渚さんはそう言うと腕時計を見たー。


「・・そろそろ出ようか? 今日はTスタジオでのCM撮りから始まるから。」


 彼女がそう言うと、千葉さんが「車まわすから先に行きますね。」と言って、部屋を出て行ったー。


「・・じゃあ私達は、今後の仕事の説明をしながら行きましょうか。」 


 渚さんはそう言って扉を開けたー。



 ビルの外に向かう廊下を歩きながら、渚さんが説明し始めた。


「・・まず現場に行く前に、美月に心掛けてもらいたいのは・・とにかくしっかりとした”挨拶”をする事ねー。


 社会人の基本は・・一にも二にも挨拶から。 ・・美月はバイトの経験がないから・・。」



 渚さんはそう言いながらエレベーターに乗り込んだ。


「そうね・・。私が現場のプロデューサーや可憐の先輩の俳優さんだと思って・・とりあえず挨拶してみなさい?」


 突然言われて、私は面食らった。


「『・・おはようございます。 大沢可憐の付き人をする事になりました倉田美月といいます。 よろしくお願いします!』って言うのよ。 ・・私を現場の監督だと思って、さあ・・早く・・!」


 ・・私がしどろもどろになっていると、渚さんは右手で私の背筋を伸ばさせたー。



「ーー背筋をピンッと伸ばして・・! 顔を上げて顎を引くっ! ・・そうっ!! 目を大きく開けて「自分はできる」と思い込むの・・。


 ・・人の印象は第一印象で決まるのよ? ・・自信がない態度をとると、社会の中ではナメられる。


 ・・一瞬で信用をなくしちゃうんだから・・。」


 私は背筋をグンと伸ばし顎を引いた。 キレイな姿勢になり、身が引き締まる思いがしたー。



「・・さあ言って。『おはようございます!』」


「・・ぉはようございます・・。」


 渚さんは私の背中をバシンと叩いたー!


「やり直しっ! もっとお腹から声をだして!!」



 私は少したじろぎながら「おはようございます!!」と、声をはりあげた。


「そう、その調子っ! 『・・大沢可憐の付き人の倉田美月です。よろしくお願いします!!』


 ・・さっ、続けて?」

 


「・・大沢可憐の付き人の倉田美月です! ・・よろしくお願いします!」


「・・そうっ! 上出来よ~♪」


 褒められた所でエレベーターが一階に到着した。


 ビルの外で車を待っている間も、渚さんは説明し続けたー。


「・・美月、覚えておきなさい。 ・・付き人であろうが、マネージャーであろうが、社長であろうが・・私達はみな、『大沢可憐』という看板を背負っているの。


 あなたの態度一つで彼女の仕事に支障が出たり・・逆にスムーズに事が運んだりもする。


 可憐は「今」は確かに旬の女優かもしれない・・。 でもこの世界ではまだまだヒヨっ子だし・・表には出さなくてもそう思っている人は多いはず・・。


 それに・・とにかくこの世界は入れ替わりが激しいのー。


 私達のちょっとしたミスやトラブルで・・彼女の仕事に影を落とすかもしれない・・。


 ・・彼女がこれから本格的な「息の長い女優」になっていくためには・・社員一丸となって結束していかなければならないの。


 あなたは今日からそのスタッフの’一員’になったー。


 あなたが頑張れば、可憐は売れる。


 あなたが怠ければ・・可憐は落ちぶれる・・。


 ーーそれを忘れずに・・これから頑張ってちょうだい!」



 ・・私は渚さんのパワーに圧倒されながら・・可憐さんの方をチラリと見た。


 可憐さんは「よろしくね? 美月さん。」と言いながら、ニッコリと笑ったー。



 気が付くと・・先程乗ってきた大型車が目の前に止まっていた。


 私達三人が乗り込むと、車はゆっくりと発進した・・。

 



   



 



 

 




 次回は一~二週間で更新すると書いておきながら・・二週間をはるかに超えてしまいました・・。すみませんでした・・。

 今後は四日位ごとに更新していきたいと思っています。

 あと、前の方の話も結構直してます。(10話以降からだけですが・・。)

 お暇な時にでも目を通していただければ嬉しいです。(^^)

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