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第17話:対決!ヴィーナス×ニート女《2》




(うう・・また・・また変な流れになっちゃった。 雰囲気を・・雰囲気を変えなきゃ・・!!)


 私は全身が小刻みに震えるのを感じていたー。



(なんで・・? なんでさっきの話の流れからこんな方向に持っていかれちゃうの? あり得ないし・・!!)


 今にも我が身を焼き尽くしそうな彼女の瞳から懸命に目を逸らしながら・・私は考えたー。 


(うう・・もうこうなったら・・!)


 私は最後の手段として・・自分の遺伝子の『劣等性』について語る事にしたー。


 

「可憐さん。」


 彼女はその濡れるような瞳の照準を・・ぴたりと私に合わせてきた。



(・・ひいいいぃ~~!!) 



 膝がガクガクしてきたが・・負けちゃいけない! ・・この「妖しい雰囲気」をぶち壊すのだー!!


 私は気力を振り絞って語り始めた。



「可憐さん、よく考えてみて下さい。 ・・あなたは今や人気絶頂のトップ女優ですよ? いわゆる・・芸能界に咲く”大輪の薔薇”です!


 それを・・こんな所で妥協して、こんな真似をするなんて・・!!


 あなた程の”美形”であれば・・男性の格好をして街に繰り出せば・・いくらでもあなたにつり合う・・若くて美しい女性を射止める事ができるはずです!


 その中に綺麗で・・なおかつあなたの秘密も守ってくれる・・「心優しい女性」が・・必ず、必ずいるはずです!


 そもそも私はあなたより八つも年上で、その上15年も引きこもっていたという・・最悪の『ニート女』ですよ!?


 もし仮に、私が本当にあなたの子供を生んだとして・・「あなた似」の子供が生まれたら最高でしょうが・・もしも、「私似」の子供が生まれてきたら・・あなた、どうします・・?


 知ってます? 私、極度の「人間恐怖症」なんですー!!


 すごいんですよ? 人前に出ると真っ赤になって・・()()()()挙動不審になって・・終いには、何も言えなくなるんです・・!


 病気ですよ!! 病気ーー!!


 ・・そんな「私」そっくりの子が生まれてきたら・・どうするつもりなんですか?


 いや・・おそらく私の方が可憐さんよりはるかに体格がいいから、絶対「私似」の子供が生まれてきますよ?


 ・・次から次へと生まれてくる子は、判を押したように・・可憐さんじゃなく私似の『ニートベイビー』達なんです・・!!


 ・・ああっ・・恐ろしいーー!!」


 終いに私はブルリと震えたー。



 一人目・・・長男、十六年後・・ニート


 二人目・・・長女、十八年後・・ニート



 三人目・・・次女、三十年後・・・ニート・・。


 

(・・本当に・・恐ろしい。)






 


「・・・ぶぶうぅっ~~!!」



 ・・黙って聞いていた可憐さんが・・突然豪快に吹き出したーー!!


 そしてそのまま・・終わりのない”爆笑地獄”に突入してしまった!!



「・・ぶあっはっはっ~・・ひゃあっはっは~・・うひゃひゃひゃ・・!」



 絶叫するような笑い声が、部屋中にこだまするー。


 普段の’女神’のような彼女はどこへやら・・お腹をかかえて、全身ヒクつかせながら・・いつまでも、いつまでも笑い続けている。


「・・ひゃあっはっはっ・・ひいぃ・・ふあっはっはっ・・うっくっくっ・・ひぃひぃ・・!!」



 何がそんなにおかしいのか分からず・・私はキョトンとしていた。


 すると彼女は涙目で・・息も絶え絶えに言った。


「・・ずいぶん口の滑らかな『人間恐怖症』だなーー!!」


 私はその言葉を聞きみるみる赤くなったー。


(・・た、確かにこれだけベラベラしゃべりまくって、”どもり”だの”人間恐怖症”だの・・説得力ないか。


 ・・っていうか・・私いま・・物凄くしゃべりまくってるんだけど・・!!


 昨日までの・・あの「滑舌の悪い私」はどこへ行ってしまったのーー!?)



「・・ショック療法が効いたか・・!?」


 ・・抜群のタイミングで最高にムカつく事を言われ、私は彼女をギロリと睨んだーー!!

 

 それを見て・・再び彼女が笑い始めるーー!



 いつまでも、いつまでも笑い止まないので・・私は終いに呆れてしまった。


 いったい・・あの”女神”のような麗しい女性はどこへ行ってしまったのか?


 こうして見ると・・今、目の前でお腹を抱えて・・と言うより「腹を抱えて」笑い転げている彼女の姿は・・どう見ても「女性」の姿ではなかったーー。


 あらためて・・この人は本当に『男性』なんだなと思った・・。


 いつもの彼女のしぐさや言葉遣いは本当に演技で・・今、こうして豪快に笑い転げている目の前の人物こそが『本当の彼』なんだと・・。


 ・・そんな事を考えていると「彼」はやっと笑いがおさまったようで、目尻の涙を拭いながらハーハーと深呼吸した。



(・・それにしてもこの人、本当に笑い上戸だよなー。 ・・こんなにツボにはまりやすくて、演技する時大丈夫なんだろうか?)


 そんな心配をしていると・・いつの間にか笑い止んだ可憐さんが、イタズラっぽい目で私の顔を覗き込んでいたー。


 そして、突然だらしなく肩肘をつくと・・だらりとした姿勢で「・・なあ。」と話しかけてきたー。


 私はその低い声にギョッとしたーー!


(うう・・またこの人は・・!!) あせりながら私は思ったー。


(・・頼むから、突然「男性モード」に切り替えないで欲しい・・!! 


 ・・一体なんなの? この・・「男性モード」と「女性モード」の違いはーー!?


 大体、この人の変わり方は・・’女装’というよりむしろ・・”二重人格”のカテゴリーに分類されると思うーー!!)


 私はあまりの豹変ぶりにビビリながら・・彼を見つめたー。


 そんな私の視線を前に・・突然、彼が妙なことを言い出した。



「・・俺の事、軽蔑する・・?」



























 

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