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第11話:美月の抵抗

 今回もR15でお願いします。(直接的な描写はありません。)

 苦手な方はお控えください。




 先程浮かんだ映像は幻影かもしれないし錯覚かもしれない・・はたまた実際に天国の母が私の中に降りて来たのかもしれなかったー。


 ・・でも、一つだけはっきりしている事がある。


 それは・・彼のしようとしている事が「まちがっている」という事だったー。


 ばれるばれないの問題ではない。


 彼のしようとしている事は『犯罪行為』なのだー!!


 その事は彼も重々承知しているはず・・。


 ・・何が彼をここまで追い詰めているのかは分からないが、彼が心の底からこうする事を望んでいるとは思えなかった。


 そもそも・・彼が私に”性的魅力”を感じるなんて、絶対にあり得ないー。


 本当に子供が欲しいという理由でこうしているなら、一時的な衝動とは違い、理性に訴えかければやめさせる事が可能なはずだ。



(・・今、やめさせれば・・なんとかなる。)


 私はそう確信し、とりあえず彼の勢いをそぐために、受け入れるフリをしたー。


「・・分かりましたー。」



「・・は?」


 彼は(いぶか)しげな表情(かお)をした。



「あなたが子供が欲しいと言うなら・・協力します!」


 可憐さんは目を見開き、私を凝視していたー。



「・・ただし。」


 私は彼の目を真っ直ぐに見据えたー。


「「今日」は絶対にイヤですー!! ・・初めて会った日にこんな事をするなんて・・これは、完全な犯罪・・『強姦』ですよ?」


 私は「強姦」という言葉を強調して叫んだー。


 案の定・・彼は手を止めて私の話を聞いていた。


 やっぱり・・彼も出来ればこんな事したくないんだ・・! ・・好き好んで犯罪者になりたがる奴なんて・・いない。


 私はそう思いながら言葉を続けたー。



「・・でも今日やめてくれたら・・後日必ずあなたの希望を叶えます。」



「ーーいつ・・?」


 

 彼は間髪入れず返してきた。


 ・・私が面食らっていると・・



「ーー嘘だな。」と言い、再び手に力を込めてきたーー!


 私はギョッとして慌てて叫んだー。


「いっ・・一年後・・!!」


 深呼吸して、もう一度繰り返した。


「・・一年待ってくれたら、必ず要求を呑みます! ほ・・本当です!!」


 彼は眉間に皺を寄せ、ボソリと呟いたー。


「・・一年・・。 ・・ずいぶん長いな。」



 彼がどうしようか悩んでいるような顔をしたので、私は慌てて付け加えたー。


「・・わ、私の誕生日だから・・わかりやすいでしょ!? ・・そ、それに・・一年あれば可憐さんとも打ち解けれると思うんです。


 このお話は・・本来私にはもったいないお話ですー。 私はもう30だし、普通であれば結婚して子供もいる年です・・。


 なのにこの先・・結婚どころか、一生’好きな人’すら出来そうにありませんー。


 ・・だ、だから・・可憐さんみたいな綺麗で有名な方との子供なら・・わ、私からお願いしたい位です!」


 私は彼女の目を見て話し続けた。




 ・・本当は、真っ赤な嘘だったーー。


 人間恐怖症で15年も引きこもっていた私は・・実のところ、結婚も出産も一生ごめんだったー。


 結婚なんかしたら・・結婚相手の家族との交流、親戚付き合い・・ましてや出産なんてしようものなら、子供の幼稚園や学校の付き合い、地域交流・・・芋づる式に交友関係が広がっていくではないかーー!!


 一般人でも手に余るのに、芸能人などなおさらごめんだ・・!

 

 霞のごとくひっそり隠れて暮らしたい自分が、有名人の身内になるなんて・・ヒグマの穴に子豚が自ら乗り込んでいくようなものだった・・!!


 普通の女性が望む一般的な幸せが・・人間嫌いの私には・・『無間地獄』なのだった。


 そんな状況にわざわざ飛び込むなんて・・私には「絶対に」有り得なかった・・。


 ・・でもそんな”ニート”な私の気持ちなんて・・この『黄金の人生』を歩んで来た人には、永遠にわからないだろう・・。


 ・・だからそこを利用して、あらゆる嘘をついて・・この場から逃げるのだ!!



 私はこの15年の全ての会話を足しても足りないだろうと思われる量の言葉を・・一気にまくしたてたー。


「・・もしも可憐さんと私が以前から知り合いだったら・・たぶん私は喜んでOKしてたと思います。


 ・・なにせ可憐さんのような有名人の方と付き合えて、”可憐さん似”の子供まで産めるんですから!!」


 ・・生まれる子供が’どちら似’かなんて分かるわけないのに・・私はただただ必死だった・・!



「・・でも・・でも・・今日は絶対に無理です・・!! 初対面でなんて・・絶対絶対・・『無理』です!!」


「無理」という言葉をくどい位に連発したー。


「・・でももし一年待ってくれたら・・必ず、必ず約束通りにします! 本当に・・本当です!!」


 ・・私は祈るような気持ちで懇願し続けたーー。



 そう・・一年あればいろいろな対策を講じることが出来る。


 まず・・父や渚さんに救いを求めることが出来るー。 ・・そしたらこのマンションから出る事が出来るし、彼の付き人を辞める事が出来る。


 今日だって・・この場から逃れて、渚さんからもらった二万円で他の宿に泊まる事ができる・・。 


 ・・それがだめでも、いつか働いたお金でこの部屋を出てアパートを借りる事だってできる・・。 


 ーー他の仕事・・アルバイトとか始めて会社から離れる事だって出来るー。  

 

 ・・いくらでも・・『逃げ場』ができる。


 今、この場さえ乗り切ればーー。



 私は高鳴る心臓を抑えながら、祈るような気持ちで彼の反応を待っていた。


 彼がこの提案を受けるか否かで運命が決まる・・!


 神様・・!! ・・お願いしますーー!!


 私はギュッと目を瞑ったー。








「・・わかった。」


 彼はそう言い私の手を離したー。



「・・・!!」



 私は勝利を確信し、内心小躍りしたい気持ちだったーー!!


 ・・でもそれを決して表に出さぬよう・・なるべく平静を装いながらベッドから降りようとした・・



 その時だった



 ・・ガシッーー!!



 ・・後ろ手に思い切り手首を掴まれたーー! 


 

「・・ーー!?」



 肩がビクリと跳ね上がり・・私は、恐る恐る彼の方を振り向いたー。


 ・・彼がまるで・・私の心を見透かす様な鋭い眼で・・こちらを見つめているーー



 ・・私の心臓はシンバルを連打するように鳴りまくっていた・・!!


 ・・喉は張り付きそうなほどカラカラに渇いている・・。



「・・一年後の今日、必ず今の続きをする・・そう約束したよな・・?」


 ギクリとしながら・・コクコクと頷いた。


「・・絶対に・・嘘はつかないよな?」


 ・・私はヒヤリとしながらも、もう一度大きく頷いたー。


「じゃあ、もしあんたが裏切れば・・もしくは確実に「裏切る」と思える行動をとったならば・・俺はその場でこの続きを実行できる。 ・・そういう事だよな?」



「・・え?」


 私は冷や水を浴びせられたような気分だったー。


 ・・ちょっと待って? それって可憐さんが「私が裏切った」と判断すれば・・一年どころかすぐにでも行動に移せるって事・・?



 私は一気に不安になったー。


 ・・彼の話は・・仮にもし、この戦いが”長期戦”にもつれこんだら・・自分が限りなく「不利な状況」に追い込まれることを意味していたー。


 ーー今彼が・・実際に自分が「考えている事」を知ったら・・想像しただけで恐ろしい。


 私はブルリと震え上がったーー。



 ・・でも今「この場」さえ乗り切れば・・明日には確実に父か渚さんに助けてもらえるー。


 ・・今、この場さえ乗り切れば・・。 私は固く目を閉じたー。


 もし今ここで、彼の提案を拒めば・・彼は確実に先程の行動を再開するだろう・・。


 ・・そしたらたぶん・・二度と、逃げる事はできないー。



 最初から私に選択の余地なんてなかった。


 ・・私は大いなる不安を抱えながらコクリと頷いたー。



「ーー同意したな・・?」


 彼はニヤリと笑ったー。


 それを見て・・私は背筋が寒くなったー。



 ・・可憐さんはニッコリと笑い、優しく手を離すと・・両手を広げておどけて見せた。


「ーー約束だよ?」


 ・・目の前の「彼」は再び『彼女』に戻っていたー。


 私は唖然として彼女を見つめていたが・・彼女はまるで、先程の自分が”幻”であったかのように・・完璧な「女性」に戻っていたーー。


 ・・そしてベッドから立ち上がり明かりをつけると、「今日は馨の所に泊まってくるね~?」と言い、部屋から出て行ったー。


 コートを着て寝室に戻った可憐さんは、時計をチラリと見た。


「11時半か・・。」


 私は(えっ?)と思った。 私と彼女の攻防は1時間ほど続いていたらしい。


 私にはとてつもなく長く感じられたが・・。



「・・今なら社長、起きてるよね。・・電話してみれば?」


 彼女はそう言い、部屋を後にしたー。




 ーーガチャリー



 ・・またしても嫌な音がしたので、私は慌てて玄関へ向かったーー!!



「・・~~~!?」



 ・・しまった・・またやられた・・!!



 玄関と廊下をつなぐ扉が・・開かないー!! ・・また外から鍵がかけられたようだーー!!



 いったい何個、鍵を取り付けているのだ!? これじゃ今日は・・この部屋から出られないじゃないかーー!!



「・・まるで監禁だ・・。」



 私はへなへなとその場に崩れ落ちた・・。




 緊張から開放された体は・・先程の恐怖を思い出し・・小刻みに震えていたーー。



























 

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