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第9話:ヴィーナスの急襲

今回の後半部分はR15に入るかもしれません。(直接的な描写などは一切ありません。)登場人物達の考え方が、もしかしたらR15かもしれません。15歳以下の方はお控えください。

 今日は満月の夜だったー。

 その部屋は窓から降り注ぐ月明かりで満たされていた。

 彼女が真っ暗な部屋では眠れないと言うので寝室の窓はレースカーテンのみがひかれていた。


 私はやはり眠れず・・ベッドの上で何度も寝返りをうっていた。

 時計を見ると22時14分ー。

 寝れないはず・・まだかなり早い時間・・ただでさえ夜型なのに仮眠もたっぷりとってしまったし眠れるはずがなかった。

 私は正面の天井を眺めつつ横目でチラリと可憐さんの顔を見てみた。


 ・・彼女はぐっすりと眠り込んでいた。

 スースーと規則的な寝息が聞こえたのでこっそりと彼女の方へ寝返りをうってみた。


 そこには月の光を受け・・青白く輝く彼女の横顔があった。

「・・月の女神みたい。」

 私はボソリと呟いた。

 子供の頃に見たギリシャ神話の月の女神の名前をなんと言ったか?

 ぼんやり輝く彼女の横顔は神々しく・・とても美しかった。


 見惚れていたがしばらくして・・これは盗み見だと思い目を背けた。

 そういえば明日の朝から朝食を作る事になっている。どうせ眠れないし渚さんから渡された栄養バランスのノートでも見てさっそく明日の朝食のメニューを考えてみようか?

 そう思いながらベッドから立ち上がり、寝室のドアの方へ向かった・・。


 その時だったー。


 ~ガチャリ~

 薄暗い部屋の中に怪しい金属音が鳴り響いた。


(うん・・?)

 不思議に思いその方向に視線を下ろしてみた。


(・・何これ・・?)

 出入口の扉の取っ手の横には金具がついていた。そしてそれが南京錠でがっちりと留められている。

 私は鍵をガチャガチャと動かしてみたが一向に外れそうになかった。


(・・なんで?・・なんで南京錠なんかかけられてるの?)

 思わず首をひねった。

(それに鍵って普通、部屋の内側から開けれるようになっているよね?・・何で内側から出られないようにしてるの・・?)

 奇妙に思いながら可憐さんの所に戻った。

(とりあえず鍵を開けてもらわないと・・。)


 月明かりの下・・可憐さんは安らかな顔で眠っていた。

 ・・まるで眠れる森の美女のようだ。

 私は熟睡している彼女を起こすのが忍びなく、声をかけるのをためらっていた。


 ーその時だった。


 ・・グイッ!

 何かに強く引っ張られ、私は前のめりの体勢で思い切りベッドに倒れこんだ。


 ボスンッ! ・・ムギュゥッ!

 下で何かがつぶれる様な、嫌な音がした。


 恐怖のあまり、ギュッと目を瞑り・・開ける事ができなかった。

 私が全身をかけて押しつぶした、この下の物体は・・まさか・・

 案の定、私はベッドの上で寝ていた可憐さんを押しつぶすようにして倒れこんでいた!


(・・ぎゃっ、ぎゃあぁぁ~~!? かっ、可憐さんをつぶしちゃった~~!

 おデブな私が、この華奢な人をつぶしちゃった!・・怪我は?骨折は?な・・内臓破裂は!?)


『・・女優、大沢可憐。付き人に潰され骨折。緊急入院ー。』

 そんな見出しが頭に浮かび・・プルプル震えた。

 でもしばらくして、下の人物はつぶれるどころか自分の体を両腕でがっちり支えていることに気付いた。


 ・・甘い香りに全身が包まれる・・。

 そろそろと顔を上げると、私につぶされたはずの可憐さんがぱっちり目を開けてこちらを見下ろしていたー。

 痛そうな表情はしていないので、どうやら肋骨が折れただの肺が潰れたなどという事態にはなっていないようだった。

 思わず赤くなりながらホッとして起き上がろうとした・・

 ・・その時だった


 ーーギュッ


 起き上がろうとした私の体が背中に回された二本の腕で引き戻された。

 そしてそのまま閉じ込められてしまった!


 ・・グ・・グ・グググッーー!!


「!??」


 背中に回された両腕がギリギリと体を圧迫する。

 まるで逃れることを拒絶するかのように、腕の力がどんどん強められていくー!


 それは・・昼間とは明らかに違う抱きしめ方だったー。

 私はわけが分からず、とにかく離れようと体を左右に振ってみた。

 しかし・・背中にまわされた両腕はゆるめるどころかますます強く締め付けてくる。

 左頬がグイグイと硬い壁に押し付けられたー。


(・・んっ?)


 私は違和感を感じぱたりと動きを止めた。

 ・・硬い・・『壁』・・?


 今私が押し付けられているのは可憐さんの胸のあたりだ。

 つい先程まで可憐さんの胸には、かなり豊かな膨らみが存在していたはず・・。


 しかし、そんな感触はなかった。

 それどころか・・華奢に見えたはずの鎖骨のラインは、かなりしっかりしていて・・

 ふわふわしてそうだと思っていた肩や胸のラインは、柔らかいどころか硬く引き締まっている。


 そして何より、あるはずの物がなかった。

 さっきまであったはずの『胸』が・・全く存在しない?


 先程私はメイクを落とした彼女の顔を見て何を思った?

 メイクをしている彼女は『女性らしい』。でも、メイクをとった彼女の顔は・・どちらかと言えば・・・中・・性・・的?


「・・ぉ・・と・・こ?」


 思わずぼそりとつぶやき、彼女の顔を見た。

 彼女は無表情な顔で私を見下ろしていたー。


「・・だったら、何?」

 聞いたことのない低い声が頭上から降って来て、私は思わず飛びのいた!

 ベッドから慌てて離れようとしたが、左手首を素早く掴まれ逃げられない。

 可憐さんはゆるりと起き上がり、私をベッドに座らせ自分と向き合わせたー。


「・・・。」


 月明かりを背後に受け、静かに座っている彼女の体のラインは・・女性そのものだったー。

 でも・・女性特有の胸元の膨らみが・・ない。


「・・本当に・・男の人なの?」

 私は恐る恐る尋ねた。


 彼女からの返事はなかった。

 でも・・否定しない事こそが答えだと思った。


「・・だましてるの?・・みんなを・・。」


 彼女は苦笑しながら真っ直ぐに私を見つめて言った。



「・・だから何。」



 私は電撃に打たれた様なショックを受けたー!


「ぉ、おとこなのに・・じ、女優なんて・・サギだっ!!」

 私は震える声で叫んだ。


 すると彼女は、どこにそんな顔を隠し持っていたのかと思う程・・ゾッとする顔でニヤリと笑ったー。


「・・首謀者は、あんたの親父だ。」


 そう言うと・・私の体をグイと引き寄せたー



「~~~!?」


 私は再び彼女の胸に倒れ込み、ガッシリと抱え込まれた!

 ・・そのまま両腕で強く抱きしめられるー。

 女性とは明らかに違うその感触に・・眩暈を覚える。


(・・何っ?・・何でこんな事するの・・!?)

 もうわけが分からなかったー。

 彼女が本当は男なのは分かった。・・でも、自分にこんな事をする理由が分からない。  

 自分は今日彼女と初対面だし、外見は普通どころかタプタプの『おばさん』だー。

 引きこもりだし女性の魅力ランキングでは最下層に位置するはず。

 こんな超絶美女(美男?)に、こんな事をされる覚えは・・一切、ない。


 ・・そんな事を考え混乱していると、全身がグルリと回転するのを感じた。



「・・・!?」



 私は目の前が真っ白になったー。



 ・・あり得ない・・



 ・・そんなわけない・・



 ・・絶対に・・絶対に・・あり得ない!!



 ・・私が、私が・・・・・『押し倒されてる』~~!??



 薄暗い部屋の中、ベッドに転がる私の()には・・今までと全く別人の姿が映っていたー。

 『彼』は私の耳元に唇を寄せると・・驚くような低い声で囁いた。


「・・あんたには・・俺の「子供」を生んでもらうー。」   






















  







                 

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