農家の晩餐
僕の食卓は、ご馳走で彩られた。
飯の時間になったので、この男にどうやって食わせようか悩んでいたところ、風呂のお礼に俺が作りますよ!と言ってリカロが冷蔵庫を開けた。
少し気が緩んだ僕はフッと笑い、しばらく洗濯物などをしていた。
しばらくして何気なく食卓の方を見やると、えっ…….今日買った食材のほぼ全てが並んでいる……
「リ……リカロさん、やっぱ結構食うんですね……」
僕は、1週間分の食費が一瞬にして胃に消えゆく儚さを思い、涙をこらえた。
「いやぁ!あっちの世界で農耕やってるとね!なかなかこんな色形のいい野菜はできないんでさ。美味しくても虫が入ってたりね!農協やっぱすげえよ〜!たまに工夫して調理したりもするんだけど、その度に嫁たちが一悶着起こしたりしてね〜」
嫁『たち』……やっぱり僕はこいつを許さん。
「それにさ、毎日楽しいけど忙しいんだよ。体動かしてると、腹一杯食うのが何よりの幸せでさ。……でもほら、嫁も村人も食わせなきゃならないだろ?普段はそんなに食べれねえんだよ、こんな肉とかさ!」
そうなのか。魔法チートや村の人手を乱用せず、堅実にやってる奴のようだ。
「食べ放題、行きてえなあ」
僕らは、薄い笑顔で見つめあった。
「来週ね」
僕は、明日には消えてくれと願いを込めて、そう答えた。