転送①ピンクツインテ悪役令嬢
「きゃああああああ!!!!!!」
いや、こっちがキャーだよ!!
なんか勝手に部屋荒らされてるし……!
あっ?!土足?!
なにこのコスプレイヤー!!不法侵入?だよね?通報、するよね………???!!!
「アンタ誰よっ!!!ここはどこなのよっ!!!」
うわぁ、その設定で続ける?
これヤバい人だ……
「あ、あの落ち着いてください。ここは僕の家です」
僕は、震える指で11……0を押す。
でも……待って。これ本当に悪意のない子だとしたら、この僕が主人公の、なろう系ファンタジーが始まっちゃったってこと?!異世界転移?!逆のパターンで?!
「バカバカバカっ!!そのスマホを手から離しなさいっ!私を誰だと思っているの?!」
だ…誰でしょう……
僕はスマホを持った手を、だらんと落とした。
「え、スマホって……」
彼女は、中世ヨーロッパ『風』の令嬢の格好をしていた。
その世界から来たなら、スマホなんて知らないはず……いや、その作品で異世界転移した主人公が、既にこの子たちに文明の利器を教えていた……?
「もう!とりあえずお腹へった!ねえ、袋ラーメンとかある?私、久々に食べたくなっちゃって…なかったらカップ麺でもいいわよ!」
「えっ……もしかして、あなたはこの現実世界からファンタジーの世界へ転移していた人なんですか……?つまり、なろうで言うと、主人公?」
僕は胸がバクバクとすごい音を立てているのを自覚していた。耳がドクンドクンとして、体の感覚がないほど緊張している。
だけど今このありえない状況をまとめないといけない。こんなの、通報したら更にこじれる。
「もおぉぉ!私だって分からないのよおぉ!!せっかくフラグ回避して、悠々自適な悪役令嬢として幼馴染の家柄のいいイケメンに惚れ直されていたところだったのにぃ!!」
僕だって分からない。
いや頼むから、僕の方がビックリさせてもらいたい。
と……とりあえずラーメンだな?!
僕は、まだ頭が混乱して、声もまともに出そうになかったので、キッチンへと向かった。
ひとまず、作業だ。作業しながら思考を取り戻そう。
「ふうぅ、ご馳走さまぁ〜!」
僕の作ったラーメンは、ほうれん草とコーン、そしてシーチキンをバター炒めして、載せただけのもの。
それでも、彼女は美味しい美味しいと言ってぐびぐび飲みほすように食べた。
気持ちのいい食べっぷりだ。悪役ながらあっぱれ!
「お、お粗末さまでした」
彼女は、チャキ、と箸を置いた。
変な間が生まれる。
「で、あの……」
僕はどう切り出していいか迷った。
ヒュオオオオオオオ!!!!!!!!
「へっ?!?!」
白く輝く光とともに、彼女は消えていった。
「……………あ?」
光に包まれていく彼女がビックリして目が見開いているのを見た。
いやだから……僕の方がビックリなんだよ……