えっとその……
「メ……あ、大手メーカー勤務です」
頼む。いい加減、工場勤務だからって見下すのはやめてくれ。たぶん、君の年収の倍はある。
「そうですか!普段はスーツですか?」
ふぅ
僕は、婚活に見切りをつけたかった。
もう充分やったけれど、惨めな気持ちをそのつど確認させられるだけだった。
僕の工場は、メンテナンスのため社員は夏季休暇に入った。普段は有給なんて使えないほどタイトだが、今月だけはお盆を挟んで2週間ほど休暇が取れる。
中には長期休暇を取らず、他拠点の工場へ手伝いにいく者もいたが、コンプラ的にも社員には有給消化してほしいらしいので、僕は素直に夏休みだ。
テロリン
スマホを見る。
さっきの婚活相手からだ。
黒髪ストレートをバレッタでハーフアップにしていた彼女。痩せていて清楚な格好だが、どうも華のない女性だった。
なんだろう、水彩画みたいな女の子が好みなんだけど、鉛筆描きっていうか……色を感じないんだよね。
こんな僕が言えたもんじゃないけど……
こう、もっとファンタジー系ラノベの表紙になってる、淡くて艶やかな色彩の女の子!
ふわっとしていて、キラキラしていて……
そうだな、胸はDくらい。髪はツヤのあるピンクで、目がタレ目でウルウルと大きい。
『楽しい時間でした。お互い婚活頑張りましょう!ありがとうございました』
僕は、婚活アドバイザーのアドバイス通りに返事を返した。お断りだ。
最初のころは、あまりに物言いが辛辣だったらしいから改善した。こちらが淑女を求めているように、向こうも紳士を求めているのが面倒なところだ。
僕はオートロックを開けた。
ただいまぁ〜……って誰もいませんよ〜
「うおっ!!!!!」
いた……?!
Dカップくらいの胸で、ウルウルの大きなタレ目、ツヤツヤのピンクの髪をツインテールにした、水彩画のような女の子……!!!!???
え、ちょっと
僕のこの汚い部屋にいるってエモくないすか?
じゃない
「えっと…………その」