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なんで、なんで、なんで
信じていた。信じてた従者に裏切られて俺はここにいる。こんな麻袋に入れられて、森に連れて行かれて、知らない大人に殺されそうになっている。
それなりに剣も習った。武術も習った。それなのに歯が立たない。
ちっぽけな人間。
そんな言葉がよく似合う。身分も何も無力の前にはなにも残らない。こんなところで死ぬのか、俺は。
「ねえ、助けてあげようか?」
綺麗な女の子の声がした。
と思ったら男ふたりのうちひとりが突然呻き出した。
よく見ると喉にナイフが刺さってる。
「誰だ?!」
もうひとりの男が身構える。
「へえ、お前はちょっとできそうだね」
またどこからか女の子の声がする。
気づくとナイフが男の後ろの木に刺さっていた。
「出てこい。」
男が何もないはずの木の上に何かを投げた気がした。
すると目の前に女の子が立っている。後ろを向いていてわからないがプラチナブロンドの髪に少し身なりのいいワンピースを着ている。
何が起こっているのか全くわからなかった。
「お前、何者だ?」
「んー。元同業者?」
女の子は首を傾げて答えた。
「元?お前いくつだ」
「12歳。」
「はっ。何言ってんだ。邪魔するな。殺すぞ。」
「ふふ。女性には優しくしなさいって、教わらなかった?」
俺より明らかに年下のその女の子は楽しそうにしている。
「ねえ、知ってる?こんな小さな体でも、いいところがあるの」
そう言って女の子は男の真下まで移動した。早すぎて、消えた瞬間男の下に現れたって表現が正しい。
そして男は呻く。
「ぐあっ。」
「小さいとそれなりに動きやすいの」
女の子は短剣を胸へと突き刺す。
「力は弱いけど、痺れ粉を塗っておけばそれなりに殺傷能力は出てくるんだよね。」
「お前…」
「殺すのは父さんたちが悲しむから、殺さないよ。安心して。でもあなたたちには効かないかな。ちょっと眠ってて。」
そして女の子は胸に刺した短剣を引き抜き、男の顎へと両手で持って殴りつけるようにぶつける。男はそのまま床に崩れ落ちて動かなくなった。