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「まあ!アイリス!とても綺麗よ!!」


アイリスの母はメリウスはにっこりと笑った。

父も兄もうんうんと頷く。

真っ赤なドレスの腰から裾にかけキラキラと細かなダイヤが散りばめられ、動くたびにスカートがキラキラと輝く。ゴテゴテと動きにくいドレスが苦手なアイリスに合わせて、細い腰からAラインにストンと落ちた一見シンプルに見えるが使っている生地などで豪華さは損なわず、それでいて動きやすい。髪型は後れ毛を出してゆるくハーフアップにまとめてある。首元には豪華なダイヤのネックレス、鎖骨を出してデコルテは広くしているが、谷間はギリギリ見えない。ダンスを踊る相手にだけ見えるほどのギリギリのライン。メイド曰く、強く儚げな令嬢をイメージしているらしい。


「さすが俺の娘だ。黙っていたらこの国一番だ。」


「当たり前です。黙っていたらアイリスに叶う女性はこの国にはいません。」


「母さま、ありがとうございます。…父さま、兄さま、一言余計ですわ。」


アイリスはキッとふたりを睨む。


「信用ないからな、お前。」


兄はクスクス笑う。


「わからなくてよ?もしかしたら、王太子の心、奪ってしまうかもですわ?」


アイリスはニヤリと笑う。

それに父は慌てた。


「大丈夫だ、アイリス。王太子の心を仕留めてこいなんてことは言わない。いつも通り、いつも通りやることやったらさっさと退散でいいんだぞ。」


父はアイリスの肩を掴んで話しかける。


「ふふ。あなた、でもアイリスの美しさに王太子様ももしかしたら心奪われるかもしれなくてよ?」


母メリウスはクスクスと笑いかける。


「だ、大丈夫だ。殿下はこの舞踏会には乗り気でない。陛下が殿下の煮え切らない態度に強行突破しただけで、殿下は興味がないようだから。」


「そんなこと、わからないでしょう?恋とは、突然堕ちるもの。アイリス、良い女は追いかけるなんて無様なことはしないのよ。きっと今日の令嬢は狩人のごとく目が爛々としているはずよ。」


「母さま…」


メリウスは話し続ける。


「いいこと、追いかけられる女になりなさい。その場での決断はしないこと。男は追いかける習性があるのだから、追われるくらいの軽い気持ちでいなさい。」


ー母さま、すでにやりました。


「そして、弱っているときには共感をしながらも、突き放す、けれどきちんと自分の気持ちは話す。向こうが自分から立ち上がれるように仕向けるのが良い女です。」


ー母さま、すでにやりました。


「か、母さま、それをすると、男性は堕ちるのですか?」


アイリスは頬を引き攣りながら尋ねる。


「少なくとも、父さまは堕ちました。」


「こら、メリウスっ!アイリスに何を話してるっ」


父は慌てる。そんな父の襟元を正しながら母は笑いかける。


「ふふ。それを自然にできてこそ、良い女ですわ。」


ー母さま、それを無意識にやってしまいました。


アイリスが静かに頬を引き攣らせている姿を見て、ファウステルも悟った。


ーアイリス、全部やったな…。



「はあ。では行きますわ。いざ、戦場へ。」

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