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「殿下!!!」


アリスが消えてから少しすると反対側の奥から声がした。


「エイムス…ここだ」


そこには騎士団長をはじめとする騎士団が駆けつけていた。


「ご無事ですか?!」


「ああ。僕は大丈夫だ。よくわかったな。」


「我々が捜索しているときにファウステル様がお越しくださり、教えてくださいました。」


「ファウステルが?どういうことだ?」


確かファウステルには妹がいた。アリスは兄さんに助けを呼んだと言っていた。まさか…


「はい。ちょうど妹君と出かけている際に男の子に助けを求められたそうで。麻袋を持った男に妹が連れ去られたと。その妹は一緒ではないのですか?」


では先ほどのアリスがその妹なのか。だが連れ去られたとはどういうことなのか。自分が麻袋の中にいた間になにが起こっていたのか。


「いや、先ほどまで一緒にいたが、どこかへ行ってしまった。こちらも麻袋に入れられていた間は眠らされていて状況がよくわかっていない。」


「そうですか…。」


「だが、妹は無事だ。それだけは確かだ。自分から、兄さんが迎えに来たと行ってしまった。」


それを聞いて騎士団長は少し安心した。


「それならば良かったです。ただこんな森の中で無事に兄に会えたのか…大丈夫でしょうか。」


ロランは考える。そしてふっと笑うと


「それは大丈夫だろう。」


と言った。あの身のこなし、あれだけの実力があればこの森の中でも無事に兄と合流していそうだ。


「ファウステルはどこにいる?お礼が言いたい。」


騎士団と共に森の外へと向かって歩き出す。


「ファウステル様には道案内をしていただいて、そのまま戻るように伝えました。」


「そうか。」


「殿下、申し訳ありませんでした。このような事態を招いてしまい……」


騎士団長を含む全員が片膝を曲げ、頭を下げた。


「大丈夫だ。今回のことは私にも責任がある。」


「ですが…」


「いい。大丈夫だ。自分の未熟さを知ったいい経験になった。父には私から話そう。」


誘拐され、殺されかけたというのに、ロランはどこか普通に見えた。それどころかその瞳には強い意志が見える。それが騎士団長には不思議で、だが王太子の立場で弱いところは見せられないのだろうと、この方はやはり強いとエイムスは思った。

実際には先ほどまで確かにロランは傷ついていた。

でもそれ以上の衝撃が、ロランの心を満たしていた。

今日のことがあったからアリスに出逢えた。ならば、これは運命だろう。あの従者には感謝しよう。ロランはそう思うことにした。


"裏切られてもいいって思えるくらい、信じられる人が現れるといいね"


少女の言葉を思い出す。





「ああ。君になら、殺されてもいいよ。」






ロランは呟く。

その声は風に隠れて誰の耳にも届いていなかった。

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