レックス6
ドンと大きな音を立てて水の魔法が解かれて行く。
俺の剣がその解かれた水魔法の水に触れ、一瞬にして蒸気を出しており、その蒸気はこのフロア全体へと霧状になり立ち込めていた。
剣の温度が今どうなっているのかは分からないが、魔力を帯びた剣は光魔法でもかけたように白く光っている。
「レックス、そのまま額のeの字を消せ」
師匠の助言に俺は3メートルもあるゴーレムの頭上へと飛び跳ねた。
頭上に上がるにつれて霧は晴れ視界がクリアになる。
「分かりました。師匠」
俺は師匠に言われた通りゴーレムの頭上へ飛び跳ね、ゴーレムの額を確認する。
額にはemeth(真理)と言う文字が書かれており、俺は師匠の言う通りにゴーレムの額のeの字をめがけて剣を振り落とす。
ゴーレムは俺の思いがけない俺の反撃に一瞬反応は遅れているようで、間一髪のところで俺の件がゴーレムの額に刻まれているeの字を切り刻む。
すると、先ほどまで動いていたゴーレムは突如としてその動きを止めた。
両手に宿していた魔力の光も消え失せてしまい、ただの置物のような姿になっていた。
額の文字を消した剣は少し思いの外強く額に刺さってしまった。
剣はなかなか抜けず、おれはゴーレムの額の上で両足をついて剣を引き抜こうともがく。
「そのまま下まで刺してしまいなさい」
師匠の声に、俺は素直に従う。
先程までびくとも動かなかった剣がスルリと下まで貫通する。
なんて切れ味なんだ。
俺は思わず感嘆してしまう。
俺が床に着陸するとゴーレムは音を立てて崩れ落ち、その後にはドロップアイテムが残された。
すぐさま師匠がそのドロップアイテムを手に取ると「へー、これはまた珍しいアイテムだね」と面白そうに呟く。
アイテムはビンに入った液状のもので、回復系のアイテムとしては見たこともないタイプだった。
「エレクサリーとかですか?」
回復系アイテムで市場に出ないのはエレクサリー位だ。
今は実在するのかは分からないが、どんな病も、どんな怪我も一瞬で治すらしい。
昔、父が母に使う為にあらゆる手段を使い手にいれた時に見ただけで、記憶も怪しい。
「回復アイテムでない事だけは確かだね。ふむ、これは面白い事が出来るかな」
師匠は何やら楽しげに嗤う。
ゾクリと背筋に冷たい物が流れた。
今までの経験上、師匠がこのように怪しく嗤う時はロクな事がないと知っている。
何も起きませんように、そう切に願っているとプツリと意識が遠のくのが分かった。
「まっ、マジか」
どうやら魔力切れを起こしたようだ。
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