レックス5
51階層を1時間程彷徨ってようやくフロアボスの部屋へと入場出来た。
フロアボスの部屋は他の場所と違い不思議な気配がある。
フロアボスが復活する理由もその不思議な気配にあるようにも思える。
フロアボスの部屋はその魔獣に有利な作りになっている。
魚類なら湖とか、火を操る魔獣なら火山地帯のような場所とか、イエティのような雪山に住む魔獣なら豪雪地帯のようなフロアになる。
今回のフロアは石畳でできた床で湿気を帯びた空気が立ち込めていた。
このパターンは人型の魔獣のことが多く これまでのフロア ボスのパターンからすると骸骨騎士とかアンデッドとかネクロマンサーみたいなものが多かった。
今回どのような魔獣だろうと、何時でも戦闘になっても良いように右手に剣を持ち気配を探る。
フロアボスの部屋に入った時点ですでにこのフロアボスのテリトリーに入っていることになる。
俺は慎重になりながら 周りに自身の魔力をゆっくりと広めていった。
これは探知魔法の一つで、自身の魔力を薄く周囲に広めることにより、自分以外の魔力を持ったものの位置を確認することができる。
「来るよ。右」
師匠の声に とっさに俺は後ろへ飛びのいたすると、さっきまで俺がいた場所にドンと大きな音とともに敵の攻撃が落ちてきた。
床が粉砕し飛び散る石畳。
チリと化した石畳が薄れて現状を把握できるようになると、そこには3メートルほどのゴーレムが立っていた。
ゴーレムの右手にはバリバリと雷のような光が走っている。
どうやら雷属性を持っているようだ。
「レックス、左も良く見るように」
またしても師匠の助言が俺の耳に届く。
師匠の言葉に ゴーレムと左手を見るとすでに 水の魔法が発動しているところだった。
ゴーレムの左手から放たれた水魔法は渦を巻いて俺の方に襲いかかる。
判断が遅れた俺はその魔法をモロに食らってしまった。
「ぐっ、コボゴボ」
ゴーレムの放った水魔法の中に閉じ込められた俺は息つく暇もなく、その術中にはまっていく。
「畜生。息ができない」
ゴーレのが魔法を使うなんて聞いたこともない。
普通あいつらは打撃が基本じゃないのかよ。
悪態つきながら手に持っていた剣をガムシャラに振るが、水の中から出ることができず次第に意識が遠のきそうになる。
「お前何のために魔力があるんだ?」
師匠の罵声が届くが、水魔法の中で俺の得意な炎の魔術を使ったところで水が沸騰するだけだ。
それに、その沸騰する温度に俺の体が耐えられるかと言うとそうではない。
人間とは案外脆い生き物なんだ。
「何も魔法を使うだけが魔力ではないだろう。索敵の応用でその魔力を剣に留めるイメージで魔法を使うんだよ。早く」
師匠は口早に説明する。
理解は出来た、けど、実践はしたことがない。
「一か八かの本番一発勝負だ」
俺は師匠の助言の通り魔力を剣に留めるイメージで魔法を発動させた。
「切り刻めかーーー!!」
俺の魔法を帯びた剣が水魔法の膜に触れた瞬間世界が白くなった。
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