夕食はフライドポテトとフレンチトースト
夜はもう一度今日作った料理をレクチャーしながら作成する。
何せ、明日からはこの商品を売らなければならないのだから二人にも覚えて貰う必要がある。
新商品云々と宣言した事もあり、明日から再現出来る商品の試作も作って行く予定だ。
勿論、ハンナさんが床までまいて無くなった塩は旦那さんが買って来た。
ついでに、蜂蜜と牛乳も買って来て貰った。
明日も販売すると約束したのに材料が無ければ今日のカオス再びになってしまう。
私は料理を完成させると食卓にフライドポテトとフレンチトーストを並べた。
私が料理を並べている内に、ハンナさんが野菜スープを温めてお皿によそってくれる。
良く考えてみると、野菜スープは本当に野菜を煮て塩と胡椒で味付けただけのようだ。
ここの家が貧乏で材料が買えなかったからこんな味付けなのかは定かではないし、私が嫁入り前に食べていた食事も家畜の餌を食べさせられていた辺りで参考にはならないだろう。
勿論家畜の餌とはジャガイモの事だ。
もっと稼いでお金に余裕が出来たら色々食べ歩きをして市場視察をするのもありだ。
何せ、才能と先立つ物が無ければ死ぬしかないのがこの世界だ。
誰も無償で衣食住を保証してくれる訳ではない。
恵まれたヒロインなら兎も角、不遇の名ばかりの王女で、結婚早々初夜で夫に火炙りにされ殺されそうになった私なら尚更だと思う。
そして、三人で食卓を囲むと、待っていましたとばかりにハンナさんが質問をして来た。
「これは何と言う食べ物なの?」
ハンナさんがフレンチトーストを指差しながら瞳をキラッキラさせながら問い掛ける。
「フレンチトーストです。子供や女性に人気の食べ物になると思いますよ」
そう説明する。
「食材は先程見た通りです。食べて見て、適正なお値段を決めて下さい」
「色々な食べ物を見て来たけど、こんな料理は初めてだわ。エトラの住んでいた所ではこのような料理を何時も食べていたの?」
「そうですね。何時も芋料理を食べさせられていました」
家畜の餌と言う認識で出されていたんだけどね。
「世界は広いのね。勉強になるわ」
ハンナさんは嬉しそうに私を見た。
「私、食べるのが大好きで、旦那と結婚した時は実家は貧しいパン屋だったの。因みに、ここが私の実家で両親が亡くなって誰も住まなくなったからここに越して来たのよ」
それでパン屋さんなんだ。
「出会った時はここのパン屋の看板娘で、美人だったなぁ」
懐かしそうに話す旦那さん、が隣を良く見ようか
「なんですって、今は美人じゃないって言うの?!」
旦那さん、その過去形では奥様殺気立つのも仕方ないですよ。
夫婦喧嘩勃発してしまってはたまったものではないと、私は話題を変える。
「あの、私はどうやってここに来たのでしょうか?それと、ここの場所をお聞きしても良いですか?」
色々目いっぱいだったので、今まで聞くのを忘れていた。
もちろん目いっぱいの理由は前世の記憶だ。
「ここはマルセタの第二の都市ユグス。港に面した他国との貿易で盛んな場所なの。とは言っても、そうなったのは私達の領地を没収された後だけどね」
ハンナさんが寂しそうに話す。
その後に、私を見つけた経緯を話してくれた。
光ったとか何とかの下りを聞くに、私は何らかの力が作用し、ここへ移動した事になる。
転生チートとか?とも思ったが、それだったら私は王女でありながら今まで家畜の餌を食べさせられるくらいの冷遇は受けていないと思う。
「理由は分からないですが、理解は出来ました。それと私の出身はこの国ではないので、これからこの国の事を色々と教えて下さい。お祖父様、お祖母様」
私は、そこで微笑む。
笑みは最強の交渉道具だ。
「勿論だ」
「勿論よ」
二人は同時に頷いた。
「じゃあ、お話はこれくらいにしてお料理を頂きますか」
ハンナさんは楽しそうに手を叩くと旦那さんにも進める。
私も「頂きます」と手を合わせた。
が、私の記憶はそこまで、気付いたらベッドで寝ていたのだ。
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