海の中ですかね
新店舗の改装は全てキリさんに任せて本日もヤマト島へ来ています。
いや~、有能な補佐官って便利だよね。
こんな有能なキリさんを派遣してくれたレンジさんに足を向けて寝れないよ。
ここまで使っておいてタダ働きさせる訳にもいかず、給与とか報奨金とかの話をしたら「私はあくまでもレンジ様の補佐官ですので、他の方から金銭は受け取りません」と断られてしまった。
だから、キリさんの労力はそのままレンジさんに還元出来るように商売を繁盛させねば、と硬く心に誓った。
移動店舗の案も私の力作図案を進呈。
キリさんがまたしても眉間にシワを寄せて説明を求めて来たのは言うまでもない。
全ての下準備が終わるまで数日かかるとの事で、キリさんから連絡用にとレンジさんから預かっている指輪を頂いた。
説明を聞くに、特定の登録された媒体同士の通話が出来る魔道具らしい。
キラキラとしたその指輪は何と、私の左手の薬指に填められた結婚指輪を隠すような作りになっていて、とても重宝していた。
「キリさんへコール」
そう言うと魔道具が反応し相手が受信可能だと、そのまま通話が開始する仕組みになっている。
「エトラ様、どうされましたか?」
直ぐにキリさんが応対してくれる。
「今ヤマト島に着きました。魔道具の感度は大丈夫そうですか?」
「はい大丈夫です。昨日もお話しましたが、これは空気のある所ならどんなに離れていても通話が可能な高性能な魔道具ですので何も心配はありません。ご安心下さい」
キリさんが当たり前のように魔道具の説明をするが、今私がいる場所はヤマト島の裏側みたいな場所で、神様の住む世界だ。
現世の世界と通信できるかと心配になるのは当たり前だと思う。
まぁ、キリさんには本当の事は言わないけどね。
「じゃあ、下準備が出来たら連絡下さい。私はヤマト島で少し巫女修行をしますので」
巫女修行と言う名のスタンプラリーですけどね。
「心得ております。準備が出来ましたらお呼びしますので安心して修行に励んで下さい。では失礼致します」
キリさんが丁重に通信を切る。
「終わったのか?」
キリさんと通信が終わるとクロードさんが私の指に填められた魔道具をマジマジと見る。
「まぁ、害意はないか」
何かを納得するように言うクロードさん。
魔道具に害意も何もないと思う。
これは単なる通信機なのだから。
*******
(キリさん視点)
エトラ様との通信を切る。
魔道具の位置はどう考えても海の中のように思える。
エトラ様に渡した魔道具は通信機にもなるが、相手の位置も同時に知る事が出来る。
これはお互いに知る事が出来る機能で待ち合わせをしている時や、相手が不測の事態で行方不明になった場合に役立つ機能だ。
レンジ様は妙にエトラ様に過保護になっており、常にエトラ様の安否を気にかけておられる。
家族でもないのに、何故ここまでされるのか。
この魔道具だけでも豪邸が土地付きで購入出来る程の一品だと言うのに。
まさか、本当にロリコンなのか?
部下達の疑問は更に深くなるのであった。
お読みいただきありがとうございます。また読んでいただけたら幸いです。




