パン屋でフライドポテト
一時間後、私はフライの鬼になっていた。
「じゃんじゃん揚げるよ〜」
ジャガイモを水から上げては水切りをして、油で揚げる。
そして、揚がった先からハンナさんが塩を振り小袋へ入れて旦那さんがそれを売る。
そんな流れが出来ていた。
山のようにあった木箱入りのジャガイモは、あっと言う間に減って行く。
これでは、ジャガイモが先か、油が先か、塩が先か、と言う勢いで減って行っている。
それに反比例するように売上のお金が山積みになり、次々キッチンのテーブルの下に山積みになって行く。
値段設定を幾らにしたのかは知らないが、ジャガイモ達はフライドポテトへ姿を変えて飛ぶように売れた。
嬉しい悲鳴である。
明日は腱鞘炎になるのではないかと心配する程だ。
そして、最初につきたのは塩だった。
気付けばキッチンの床が白く成る程塩が飛んでいる。
そう言えば、途中からハンナさんの塩の振り方お相撲さんのようになっていた気もする。
決して体格のせいで見間違えた訳ではない。
塩切れのため、旦那さんに終了の合図を送ると
「本日完売です」
と、旦那さんがお店の中で大きな声で宣言するが、何故かお客様は納得しない。
人が人を呼び、気付いたらお店の中は満員御礼状態だった。
これも決してお相撲ではない。
「明日、明日の午後からまた販売致します」
ハンナさんも慌ててお店に行くとお客様にそう言って頭を下げている。
が、それで納得する様子もない。
何せ、家畜の餌と思われていたジャガイモだ。
食べた事もないだろう初めての味、皆さんの舌は魅了されてしまったのだろう。
何か変わりになって、あまり時間のかからない物はあるかな?
私は急いでお店の食パンを取るとキッチンへと走った。
そして、瓶の中に入っている牛乳がかわってないかを確認してから卵、蜂蜜と深皿の中に投下する。
そして、それをよく混ぜた所へ切ったパンを入れて液体が良く染みるようにひたすら浸す。
頃合いを見てフライパンを出し、バターをひいたら先程の液体にひたしたパンを焼き始めた。
そして、じゃじゃ〜ん。
フレンチトーストの完成だ。
大皿2つ分のフレンチトーストを作ったら、試食品ようにと一口サイズに切り、私はもう一度お店へと向かう。
納得していないお客様達に押し問答されているハンナさんご夫婦の前まで向かうと、私はハンナさんと旦那さんに先程の大皿を一つずつ渡した。
「明日以降販売する新商品の試作品で〜す。ご賞味下さ〜い」
私が大きな声でそう宣伝すると皆さん我先にとフレンチトーストを試食する。
「何これ」「美味しい」と目を輝かせて話すお客様達。
「これから色々な商品を開発して行きますので、今後もご贔屓にお願いしま〜す」
響き良くそう言うと
「新商品」
「ちょっとこれ美味しい」
「どうなっているの」
と口々に好感触の言葉が飛ぶ。
一応、店内に入るお客様みなさんに試食品が行き渡ると満足したのか、お客様は次々と帰って行った。
「エトラありがとう」
お客様が帰った後の店内で、ハンナさんは泣きながら私を抱きしめる。
「いえいえ、家族ですから」
私はニコリと微笑むと二人は嬉しそうに笑った。
ええ、たんまり稼ぎまっせ〜。
商魂に再び火がついた。
お読み頂きありがとうございます。
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