ゴンちゃんのごはん
ヤマト島での飲めや歌への大宴会は朝方まで続いた。
東の空が白身のから頃には既に、あの宴会会場に立っている者はいなかった。
ただ一人を除いては。
その一人は飲食を一切しない、睡眠も必要としない人物、クロードさんだ。
私は生憎まだ10歳の体だった為にてっぺんを超える前に夢の中の住人になっていた。
勿論、まだまだ宴もたけなわ状態のリナさんが私の面倒を見る訳もなく。
クロードさんが社の中に設置されていた布団に私を寝かせてくれたのだ。
この世界に来て布団?やはりどこか日本を思わせる。
こちらの世界に来てから寝具はベッドだったから、寝具の標準はベッドなのだと思っていたが、どうやら布団もあるらしい。
高揚した気分の中、何時もより早起きした私はそっと社の扉を開いた。
朝日が登る前の時間は何処か清々しい空気を吸えると言う錯覚からか、思いっきり息を吸い込んだ私は激しく後悔する事になった。
「うっ、酒臭い」
アルコールを飲み過ぎた人特有のあの嫌な臭いが辺りを濃厚に包んでいた。
息をするだけでも酔いそうな錯覚に苛まれながら昨夜の宴会会場へと足を向ける。
アルコール臭のモヤなのか、単に朝特有のモヤなのか分からないが、そのモヤの下に死屍累々状態の島民の皆さんを発見する。
唯一の救いは子供達は早い時間に親が自宅に連れて帰った事だ。
まぁ、子供が寝た後に再びここに戻って来て宴会を続投していたのは知っていた。
そこまで確認した所で睡魔に負けてしまったのだが。
「おはよう。クロードさん」
朝の挨拶をするとクロードさんが私の方を見た。
クロードさんの大周辺をゴンちゃんが口をパクパクさせて飛んでいる。
「ああ、エトラ。おはよう」
クロードさんは私は認識すると私の方まで歩いてくる。
勿論ゴンちゃんも一緒に私の方へ飛んで来る。
「ゴンちゃんは今何をしていたんですか?」
口をパクパクと、まるで何かを食べているようだった。
「ああ、霞を食べていたんだよ」
「霞ですか?」
あれは霞と言うよりアルコール臭のモヤではなかろうか?
霞ってもっとこう清々しいものじゃないだろうか?
「仙人は霞を食べると言うだろう。エトラがゴンをある程度育てるまでは、ゴンはこうやって霞を食べて成長するんだ。ゴンはまだ生まれたてのヒヨコだからね。エトラから出る神力も食べて育つ内に現世の物も食べれるようになるよ」
「私の神力ですか?」
「うん。そう。ゴンは聖物だからね。基本的にはエネルギーを、糧にするんだ。ほら、今みたいに島民の皆さんがお酒に酔って体外にアルコールと一緒に神力を放出している物を食べるようにね」
「んんん?」
だから島民の皆さんはそれを分かっていて協力してくれていたんだ。
こんなに酔ってまで、なんていい人達なのだろう。
感動したのも束の間、後からリナさんにそんな事は知らなかった、単に飲むのが好きな人達なのと言われて終わってしまった。
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