スタンプラリーですか
目をそっと開けるとクロードさんがウカさんにハンコを貰っている所だった。
クロードさんが手に持つそれはとても既視感のある物だった。
あれ、なんか夏休みのラジオ体操みたい。
「はい。エトラ。先ずは一個目おめでとう」
そう言ってウカさんがハンコを押したカードを手渡して来るクロードさん。
「神殿巡りスタンプラリー?」
カードに書かれている文字を読み思わずクロードさんを見た。
冗談ですよね。
そう思って見ると
「一枚目は亜神ではない神のページで、二枚目からは亜神のページになります。巫女修行とは別にエトラには14歳になる前までに一枚目を完遂して欲しいのです」
ニコリとクロードさんはそう宣言する。
「神は基本的に現世に干渉出来ない事になっています。そして、例外として干渉するためにはそれなりの条件が必要になります。エトラには14歳になる年に神の山に隔離されているヤマタノオロチの頭を封印、もしくは破壊して貰いたい。その為のスタンプラリーのカードだ。これがいっぱいになると、そのカードにハンコを押した神々の力を借りる事が出来る仕組みになっています。それでヤマタノオロチを退治して欲しいのです」
伝説級の怪物の退治なんて、当たり前に言ってくれちゃうクロードさん。
「あれって英雄クラスがやっとこ封印したんですよね。私では力不足です」
「うん。だからそれを補うためのスタンプラリーなんだよ。因みに、エトラがこの国に来たから、エトラが14歳になる年の生贄は君の従弟殿になるだろうね」
私の従弟って誰だろう?
何せ身内付き合いはほとんどない。
強いて言えば交流があったのはアンドリュー兄さんくらいだ。
「エトラの従弟はエトラのお父さんの弟の子どもで、エトラより一月遅く生まれた子供だよ」
やはり記憶にない。
けど、記憶にない人だからと生贄になる事を放置する理由にもならない。
「生贄は49年に一度だけど、今回は見逃せない特別な理由があるんだ」
「特別な理由?」
「生贄を取り込む事によって頭だけだったヤマタノオロチの胴体がそろそろ完成するんだよ」
「そもそも生贄は何故必要だったんですか?」
「49年に一度頭と精神体が引かれ合うんだけど、それを防ぐためだったんだ。心身一如になる事で現世に影響を及ぼす事が出来るからね。それを防ぐため仕方がなかったんだ」
クロードさんはとても悲しそうな顔で話す。
切実に話すクロードさんを見て私まで悲しくなってしまった。
「生まれながら神の加護がある人達は何れかの世で生贄になった魂なのだよ。神の加護は神々達がその犠牲になった魂の救済も含めて与えているんだ」
「では、アンドリューお兄様も今の生の前に生贄になった事があるの」
「そう言う事になるね」
だから、神々は身を捧げた魂に報いる為に来世へのギフトで加護を授けているんだよ。
クロードさんはもの悲しげに微笑んだ。
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