クロードさんと転移魔術の特訓パート2
他人事だと思って簡単に言ってくれちゃうクロードさん。
「自分以外の人を連れての転移は、相手の体を自身の魔力で覆う必要があります。では早速私の体をエトラの魔力で覆って下さい」
特訓二日目にしてこの課題はスパルタにも程がある。
少し飛ばし過ぎなのではなかろうか?
それとも何か、私、知らない内にクロードさんの逆鱗に触れていた?
昨日の事を思い出すに特別反省すべき点は見当たらない。
と、言うより私の楽しい食事タイムが21回も無くなってしまった事を考えれば、私がクロードさんに文句を言っても良いような気にさえなって来る。
けど、それはお門違いだから行動には移さない。
あの時はクロードさんだってお腹を空かせた私の為にわざわざクロードさんは自分用の非常食を分けてくれたのだから。
エトラは知る由もない。
その非常食のためにクロードさんが昨夜姉からこっぴどく説教されたなどと言う事は。
「手始めに、自分の体を魔力で覆う事を意識してみましょうか。先ずは何時ものように意識せずに魔術を発動させようとする所から始めましょう」
クロードさんの助言の通りに魔術を発動させる一歩手前の状態で魔力を固定、その状態を維持しつつその魔力をなんとなく感覚で感じるように努めながら魔術を発動させる。
目を閉じて魔力の気配を感じる。
体中を巡る魔力、お腹の底から湧き上がる感覚がする、けど、本当は違う場所から湧き上がっているように思える。
「どうですか?つかめましたか?」
クロードさんは手を差し出しさながら問い掛けて来る。
「はい。分かりました」
そうだ、理解した。
前世の感覚があるからはっきりと分かる。
体を巡る異物のような力。
良く異世界転生チートとか聞くけれど、もしかしたら魔力の認識力が優れていたのかもしれない。
私はクロードさんの手を取ると自身の周りに流れ出ている魔力をクロードさんの方まで伸ばすイメージをする。
魔力は私のイメージ通りにクロードさんの全身を覆う。
「では、やってみますね転移魔法」
私はそう言うと目を閉じて転移する場所のイメージを頭の中に蓄積させる。
そして
「転移」
魔法発動に必要なのはイメージ。
呪文とは魔術を発動させるためのイメージをはっきりさせる為の儀式のようなものだ。
私がしっかりイメージを持って魔力を適切に使用すれば良いだけの話。
故に、この世界の魔術は理解出来た。
目を開けるとそこは先ほどの祠の前ではなく、昨日来たあの草原の中に立っていた。
隣を見ればクロードさんが満面の笑みで私の魔術の成功を称えてくれている。
「お見事、成功ですよ。エトラ」
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