転移魔術で帰還
結論から言うと、転移の魔術をマスターしました。
イエーイやったね!
案外簡単に出来てしまい正直肩透かしを喰らったような気分でした。
「ではクロードさん。また、明日もよろしくお願いします」
「はい。明日はここの祠の前でお持ちしておりますね」
クロードさんは笑顔で私を見送ってくれる。
四六時中笑顔で対応してくれたクロードさんだったけど、世の中には笑顔で怒る人もいるのだと理解した日でもあった。
クロードさんの笑顔は時々凄い圧力を感じるんだよね。
明日は早めに祠の前に来よう。
そして、先ほどのイメージトレーニングは無駄ではなかった事に私の溜飲も下がる。
「はい。明日もよろしくお願いします。では、失礼します」
何度も同じことを言ってしまってはいるが、この時の私は少しばかりテンパっていたので許して欲しい。
私はクロードさんにお辞儀をしながら自宅の自室をイメージしながら魔力を流す。
すると、魔法陣が起動し一瞬でいつも見慣れている部屋へと転移する。
ふわりと着地するとそこは自室の床で何故かホッとした。
「無事に帰って来た」
私は急いで階下へと移動し見慣れている二人の姿を発見すると一気に安堵感で満たされた。
「ただいま戻りました。おじい様、おばあ様」
「おお、エトラ帰って来たのかい」
ハンナさんはそう言うと私を抱きしめる。
「はい。戻りました。また、明日もヤマト島へ行きます。それだけ言おうと思って」
「ご飯はどうしようかね。てっきり今日は島に泊まると思って準備していなかったんだよ」
困ったように言うハンナさん。
けど、
「大丈夫です。今日は何故かお腹いっぱいで夕食は入らないと思います」
そうなんだよね。
今日クロードさんに貰った非常食を食べてからお腹が空かないのだ、さすが転移の魔術を指導する人が常に食べている非常食なだけありお腹の持ちも違う。
「なので、このまま体を清めたら休みますね」
そう言って台所を後にしようとした時、突然意識がなくなってしまった。
*******
「ちょっと待ったぁ~」
食事はいらないと台所を出ようとしたエトラが突然ガックンとなったかと思うと、先ほどの叫び声を発した。
「どうゆうこと?何故こんなに満腹なの?クロ。説明しなさい」
エトラは怒りを露わにする。
右手から光が見える事から、光の神様がいつものように夕飯を召し上がりにいらしゃったようだ。
もちろん、エトラはその事実を知らない様子。
毎朝私たちが寝てしまったエトラを部屋まで運んでいると思っているようだし。
そんな事を考えているとエトラの左手が光だす。
「すみません姉上。私の責任です。今日エトラがお腹を空かせている様子だったので非常食と言って仙人の丸薬を食べさせてしまいました」
仙人の丸薬?
「あの、食べると普通の人間でも一週間は食事をしなくても良いと言う?」
「はい。すみません。今日の夕飯まで間に合わせようと急いでいたものでうっかりしておりました」
「何をしておるのだ。これでは本末転倒ではないか」
尚も一人漫才を繰り広げるエトラだったが、取り合えず一週間は食事をしないのだなと納得するハンナであった。
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