白いニョロってまるで
「寵愛ですか?」
「そうです寵愛です。普通の加護は生まれた時、もしくは7歳の儀式の時に授かるのですが、寵愛は違います。人生の途中で神様と何らかの縁を結ぶ事で生じます」
加護が普通かと言われると、それは違う、何故なら国内で加護持ちは両手で数えられる程度の存在だからだ。
それをリナさんは普通と言っちゃうあたり変わっているのだと思う。
でも、思い当たる事もある。
あの日、本来なら死んでいたであろうあの時に、確かに聞こえた声。
あれが神様だったと言われれば納得もいく。
「どうやら心当たりがあるようですね」
リナさんはニコリと微笑むと私の手を取る。
「うなぎ様は既に神使として仕える神様がいらっしゃいますが、子うなぎ様方はまだ決まっていません。子うなぎ様方がエトラちゃんと契約したいようですよ」
リナさんに言われ海上を見ると7匹の白い子うなぎ達が海上より1mほど胴体を出しニョロニョロとしている。
あれ、なんだろう、見た事があるような気がする。
ジッと見ていると、前世を思い出す。
「そうだ。ムーミ○のニョロニョ○だ〜」
あれって可愛いんだよね。
癒しだよ。
癒し。
まぁ、今目の前にいるのはうなぎなんだけど。
「確かにニョロニョロはしているけど、そう言う名前ではないわよ」
「はい。すみません」
前世を思い出してテンパってしまった。
リナさんに謝罪すると、もう一度子うなぎ様達を見る。
「契約すると子うなぎ様達の能力に応じて魔法のサポートとか索敵とか色々してもらえるよ。それに契約すれば海とか川とかなくても魔素の中を泳ぐことかができるから何処に居ても大丈夫」
海や川でなくても泳げる所が既に怖い。
けど、索敵やサポートをしてくれるなら心強い。
「分かりました。契約します」
「契約は本当の名前を使って行うの『我、汝と契約を望む者なり。我が名は』と言って自分の名前を言うの、それに対して相手が答えればOKよ」
本当の名前。
「大丈夫よエトラちゃん。私、貴女の正体を知っているから。だって、巫女ですもの」
またもやドヤ顔で話すリナさん。
意味が分からないけど、リナさんには本当の名前がバレても大丈夫な気がする。
「分かりました。では、契約をします」
私は船の縁ギリギリのラインに立つと海へ向けて手を掲げる。
「我、汝と契約を望む者なり。我が名はミリア・エトラ・ルノーなり」
そう唱えると子うなぎ様達が光輝いた。
「我、汝との契約を承諾する者なり。我が名は」
「「「「「「「ニョロ・・・・・・・」」」」」」」
光と共に子うなぎ様達が私の周りを囲む。
「我らが主様、何時でも我らを呼んで下さい」
目を瞑ると7匹の情報が頭の中にインプットされる。
「お母様が神様に主様の事をお願いされたの。だから会いに来ました。二つの魂を持つ者よ。これより我らが主様をお助け致します」
7匹の子うなぎ様達はそう言うとサッと消えた。
気付けばうなぎ様も消えている。
「契約で結ばれているから、必要な能力を思い描いて『召喚』と言えば適任の子うなぎ様がエトラちゃんの元に来るはずよ」
そう言うと、リナさんは私の手をとり船の中央へと誘う。
「神使の眷属と契約出来るのは、神使の主、つまり神様から許可がおりた時だけ」
リナさんはそう言うと、少し悲しげに笑った。
「それだけ、これからが大変なんだけどね」
リナさんがボソリと呟いた声は、あいにく私には届かなかった。
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