拉致られました
「今日は、そのことを言う為にエトラちゃんを待っていたの。因みに、儀式は5日後で、禊とか色々準備があるから3日前には島入りして欲しいなぁ」
勝手に日取りを決めて、勝手に人の予定を決めるって、有り得ない。
「そうしないと、エトラちゃんの中に入った卵が死んじゃうか、もしくは暴れちゃうかも」
リナさんは私の鼻を押しながらそう話すが、何故鼻を押すのか?
それに、卵ってやっぱりあれだよね。
昨日のリナさん痴女事件の。
「エトラちゃんに卵を譲ったから、こうして私は自由に島以外の場所にゆっくりと滞在出来るの」
思わず目がパチクリとしてしまった。
「前は出れて二日程度だったんだけど、今は、ほら、こんなにゆっくり出来るんだもん。エトラちゃんには感謝だよ」
「何故二日なんですか?」
何かヤバメの話の流れなんですけど。
「神力って言うの?卵ちゃんのエネルギー供給に必要な神力がヤマト島以外だとなかなか難しいのよね。神殿に行ってもそれ程強い神力がある訳でもないし」
えっ、何気に神殿の悪口言ってない?
「神殿に神力がない訳じゃなくて、その力を顕現出来る人が要るかどうかが問題なの」
「どういう事ですか?」
「神の力をその身に宿せる能力があるかどうか、資質にもよるけど、卵ちゃんへの供給する神力は加護持ちクラスでないと難しいのよね。卵ちゃんに必要な神力は光の神の神力なんだけど、その加護を持っている人はこの国でちょっと面倒な立場の人物で神殿にはいないのよ。だから、常に光の神力で満ちているヤマト島にいる内は大丈夫なんだけど、島から出た時は巫女の体内に蓄積しておいた分の神力を使い卵ちゃんを維持している訳」
リナさんはそこまで話すと「これ以上は島に来てから詳しく説明するわね」とだけ言って話を切り上げた。
「準備が出来たらお父さんに言って、島まで案内してくれるから」
「ちょっ、ちょっと待って下さい。今の話だと私もヤマト島へ行かなければ不味いのではないですか?」
あの事件は昨日の午前中の話だ。
今はもう二日目に突入している。
「え〜、そんなに光の神力があるのに何言ってるの?もしかして、エトラちゃん気付いてないの?」
リナさんはとても不思議そうに私を見る。
「気付くも気付かないも、私は魔力も少なく落ちこぼれなんです」
だから、王女なのにあんな扱いだったのだ。
思い出すととても悲しい。
「それ、本気で言ってる?本当に知らないの?」
ガジリと肩を掴まれ真剣な面持ちのリナさんと目が合った。
何かが私を侵食する気配にブルリとする。
「チッ、弾かれた」
舌打ちをするリナさんは、何時ものおちゃらけた雰囲気は一切ない。
「リナさん?」
「エトラ、あんた結構面倒な事になってるね」
低音で話すリナさんは、初めて見る怖い顔で私を見ている。
「キリさん。悪いんだけど、この子の保護者にヤマト島の巫女が継承の儀式のために連れて行ったと伝えて下さい。多分、それで理解出来ると思います。神力が強すぎて時間がないとも」
「賜りました」
キリさんは深々と礼をする。
それを見届けるとリナさんは私を引っ張るように歩き出す。
「えっ、ちょっと、困ります。こんな急に。新しい店舗の契約とか、色々あるんです」
抗議する私にリナさんは満面の笑みを浮かべ「来週にしな」とだけ言って、気付けばウシオさんと二人がかりで私を連行するのだった。
「え〜っ、新店舗〜」
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