キリさん、まんざらじゃなかったんですね(キリさん視点)
うとうとと何となく目を開けると淡い光と心地よい潮風が私の頬を撫でた。
なんとなく潮風とは違ういい匂いと柔らかな感触がとても心地よくて、
「あら、起きましたね」
その言葉で私は一瞬にして現実へと引き起こされた。
「あっ、貴女は」
さっきまでの出来事が走馬灯のように頭をよぎった。
エトラ様と港に来たら頭のいかれた化粧濃いめの占い師風の女性にいきなり旦那様と呼ばれ挙げ句、その父親に体がへし折れるかと思うくらいのハグをされた。
そこまでは覚えている。
が、それが気づいてみれば私は見知らぬ女性の膝枕の上に頭を乗せている状態だ。
それに普段の目覚めは最悪なのに、今だけは凄く清々しい気分だ。
目の前の女性は先ほど見た占い師風の女性とは打って変わって、とても可憐で庇護欲をそそるような、そんな女性だ。
「名前をお聞きしてもいいですか?」
彼女の膝の上に頭を乗せながらそう問いかけた。
女性は目を大きく見開き、私を見る。
鈴を転がすようなかわいい声で笑ったかと思うとにこりと微笑んで
「リナです」
と答えた。
「リナさんですか。良い名前ですね」
ぼやけた頭がだんだんと回転していく、はてな、リナさん?
聞いた事がある名だ。
つい最近、どこかで・・・
さぁ~っと血の気が引く。
「リナさん?」
「はい」
「リナ・ユズキさん?」
「はい、そうですわ旦那様、それともキリ様とお呼びすればいいかしらぁん」
起き上がろうとする私の手をとり押し倒して来たリナさんが私に馬乗りになる。
「今カワイイと思いましたよね」
「いいえ」
「良い匂いがするとか思いましたよね?」
「いいえ」
「案外キリさんって変態なんですねぇ」
「いいえ。どいて貰えませんか?」
「どいて欲しいんですか?」
「はい」
「本当に?」
「はい、どいて下さい」
「どくと思います?折角捉えたのに、ねぇ旦那様」
そう言って顔を近づけて来るリナさんを力の限り押し返す。
ドサリと形勢逆転させホっとしたのもつかの間。
「キリさん、何をしているのですか?」
「おおー!!婿殿、えらく積極的ですなぁ」
タイミング良く部屋へ入って来たエトラ様とリナさんのお父様は、私がリナさんを押し倒す所だけをタイミング良く見ていた。
「あら、バレちゃいましたね。旦那様」
気付けば微妙な感じでリナさんの服が乱れている。
「えっ、いや、違うんです」
「何が違うの?男らしくないなぁ」
「そうですよ婿殿。ここは潔く責任をとって貰わねば」
ニヤリと笑うリナさんのお父様。
「えっ、冤罪ですよ〜!!」
私の言葉は目撃者である二人には通じなかった。
お読み頂きありがとうございます。
また、読んで頂けたら幸いです。




