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ファーストフード店候補地



「エトラ様。ようこそいらしてくださいました」

ウシオさんはにこやかに私達を迎い入れてくれた。


ただし、私達の中には勿論リナさんも含まれている。


「お父さん、私の旦那様を紹介するわ」

リナさんはキリさんと腕を組んでウシオさんの前に出る。

勿論私の目からはリナさんはキリさんに無理やり腕を回し込んでるようにしか見えないが、父親であるウシオさんはその光景を前にプルプルと震えていた。

「けっ、けしからん。まだ結婚もしていない未婚の男女が、そんな破廉恥な事を」

ウシオさん。

豪快な海の男だとばかり思っていたが、意外と娘には純なようだ。

プルプルと震えるウシオさんを前にキリさんは緊張を見せた。

ゴクリと生唾を飲み込むキリさん。

「あっ、あのお父様」

「お父様だとー!!」

ウシオさんは如何にも怒っている風で、ドシドシと音を立ててキリさんの前まで行った。


『どうしよう、これって修羅場?私がキリさんを生贄にしたから?』

まるで、昼ドラを見るかのようにドキドキと事の成り行きを見守る。

「また勝手に結婚相手と言っているのだと思ったが、お父様か、お父様、お父様」

どうやら感動しているようだ。

「あっ、いえ、お嬢さんが勝手にですね」

「『お嬢さん』なんと他人行儀な『リナ』と呼びなさい」

ウシオさんはキリさんの肩を軽く叩く。

「君のような礼儀正しい青年になら心置き無く娘を嫁にやれる」

そして、何故か涙を流すウシオさん。

「もう、やだ〜、涙脆いお父さんなんて最低。でも、祝ってくれてありがとう。私は世界一幸せな花嫁よ」

そして、キリさんはウシオさんとリナさんに抱きつかれている。

そんなキリさんは仕切りと私の方を見る。

まるで、雨の中の捨て犬のように。

勿論、私はそっと目を逸した。

『ごめん、キリさん。私にはその二人は制御出来ない。墓は作って上げるから諦めて下さい』

心の中で兎に角拝む。

それに、ウシオさんを『お父様』と呼んだキリさんも悪いのだ。

二人からベアハッグをきめられたキリさんは、そこで倒れ込んでしまった。


そんなキリさんはリナさんに任せて私はウシオさんにお願いしてファーストフード店に相応しい物件探しに出掛けた。


「中古の物件で海が見えて、海風が気持ち良い所はありますか?」


「ああ、幾つかあるぜ。エトラ様は、俺の娘婿の主人らしいじゃねぇか。二人を出会わせてくれた例に良い物件を仲介料なしで案内するぜ」


仲介料なしとは嬉しい申し出だ。

『キリさん、貴方の死は無駄にはしません』

まだ死んではいないけど、ある意味ご愁傷様です。

心の中で盛大に合掌する。


さて、その後ウシオさんに案内して貰ったのは港から五分歩いた所にあるこじんまりしたお店跡と、そのお店から東に5分歩いた所にある少し広めのレストラン風のお店。

ここは現在もお店をやっているが、港から十分離れているうえに、メインの道からも大分離れている為に客足は少ないらしい。


そろそろ店を畳もうかと思っていたそうだ。


年の頃は50代後半の夫婦が営んでおり、そろそろ孫達の所へ行って隠居生活をするつもりらしい。


「この店を引き継いでくれる方がいるのであれば、値段は幾らでも良いのでお譲りしたい」


聞けば、一年前からウシオさんに相談していたらしいが、なかなか買い手がつかないらしい。


港からは離れているけど、店のテラスからは海が見える。

まぁ、お店自体が崖の上にあり。夜になると一段と強い風が入る。

で、その崖の下には砂地が見えており、時折人の姿も見受けられる。

「気に入りました。今のと、先程見た所両方頂きます」

勿論ニコニコ現金払いで。

お読み頂きありがとうございます。

また、誤字報告ありがとうございます。大変助かりました。この場で感謝させていただきます。本当にありがとうございます。

また、読んで頂けたら幸いです。

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