ドンさんに事情聴取2
「そう言えばドンさん。先日教えて頂いた辛いお酒の素を売っている方達に今日会って来ました」
「おお、そうですか。それは良かった。良い品物に会えましたか?」
ドンさんはそう言いながらケーキを食べる。
「ええ、それは良い品に会えましたよ」
とんでもない婚活巫女さんでしたけど、一応交渉出来る権利は得た。
「あの島の酒は旨いと評判でねぇ」
そう言いながらドンさんはホットココアを飲む。
「ドンさんって甘いの好きなんですか?男性でホットココアを注文する方って珍しいので、もし良ければ蜂蜜酒もありましたよ。注文しますか?」
「あっ、いえ、私、お酒は飲まないので、その分甘い物が大好きで、もし追加で注文して良いのならパフェと言う物をお願いします」
ホクホク笑顔でそう応えるドンさん。
「いいですよ。すみません。パフェ一つお願いしま〜す」
私は近くを通るウエイトレスさんに注文をする。
「かしこまりました。只今お持ちいたします」
ウエイトレスさんはそう言うと厨房へと向かった。
「へ〜。ドンさんはお酒をのまないんですか」
珍しくメイソンさんが食いつく。
ドンさんはいかにもお酒が好きそうな顔をしていて「これで飲まないのは詐欺だ」と思うくらいにはお酒好きに見える。
そんなお酒嫌いのドンさんがなぜ何故あのお酒を私に見せて勧めてきたのか、それ以前に、何故あんなお酒を持っていたのか疑問である。
「実は今日ですね。そのお酒を売っているお姉さんにメイソンさんが求婚されたんです。挙げ句、(私に)接吻まで・・・それも無理やりです。一族の特別な契約だそうで、一度交わすと破棄も出来なくて・・・」
そう言ってチラッとドンさんを見ると、顔面蒼白状態になっていた。
「すっ、すみません。私は良い交易相手を探しているとウシオさんに声をかけられて紹介するつもりで話を振ったんです。決してメイソンさんを結婚させたかった訳では」
ドンさんは涙目でメイソンさんの手を取る。
メイソンさんは慌ててドンさんに「誤解です」を連呼するが、感極まったドンさんには一切通じていない。
何故か平謝りをするドンさん。
滅茶苦茶目立ってます。
「ドンさん、接吻されたのも、一族の契約を勝手に交わされたのも俺じゃなくて、エトラなんです」
「へっ?」
ドンさんは目を点にして私の方を見る。
「はい。綺麗なお姉さんにファーストキスをうは奪われたのも、勝手に契約されたのも全部私です」
そう言って紅茶を一口飲む。
「で、あの島の事、巫女さんの事、ドンさんが知っている範囲で良いので教えて下さい」
私が尋ねるとドンさんは深いため息を吐いた。
「すみません。実はヤマト島は元々ここの領主であるカーター伯爵の管轄でした。島に納められた祠には代々カーター伯爵家の当主と島の巫女だけが入れる事になっており、それ以外の者は出入り出来ません。それは、掟ではなく、物理的に出来ないのです。何か不思議な力があるらしく、入口に入室出来る者の名前が勝手に記載されているそうです」
カーター伯爵と言うとお祖父様の事だよね。
「じゃあ、その祠には今の巫女さんと私のお祖父様が入れる事になるの?」
その質問にドンさんは首を横に振る。
「いえ、カーター伯爵の名前は取り上げられており、今、その名前を自由に使えるのは現在の国王陛下です。名前の記載はあくまでも勝手に祠が刻むもの。記載された名前が変えられないのであれば、その名前の人物になれば良いのです」
「お祖父様が自身の名を名乗れないのも、伯爵家が今も名前だけで存続出来るのも、全てその祠に入る為?伯爵家が潰れれば誰もカーターを名乗れないから?」
そう言ってドンさんを見ると
「仰る通りです。エトラ様」
ドンさんは深々と頭を下げた。
「今更だけど。ドンさんって何者?」
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