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目が覚めたら、そこは

『お前、色々と変わっているなぁ』

楽しそうに響く男の人の声。


『この記憶も実に興味深い。この世界では見たこともない物だ』


飛び交う車。

手に持つスマホ。

友達と食べたファーストフード。

懐かしい光景。


『退屈していた所に面白いものが転がり込んだものだ。良く見つけたな、クロ』


楽しそうに笑う女の人の声。


『その、犬みたいな愛称止めてください。皆にも馬鹿にされてしまうよ』


『私以外にそなたをクロと呼べる者などこの世にいないだろう』


『ハァ〜ったく、姉上には敵いませんねぇ』


何処か諦めたような声。


『そろそろ起きますかね?』

『起きるさ。この娘の願いを叶えてやったのだから、その代償を払って貰わねば』


ニンマリと女の人は楽しそうに言う。

『このポテトフライなるものとか、早く我に供物を捧げよ』


あぁ、ポテトフライ美味しいよねぇ、バーガーも食べたいなぁ。

あぁ、思い出したらお腹空いたなぁ。



美味しそうな匂いで目が覚めた。


目を開けると木造の部屋で、ちょっと硬めのベッドの上で寝ていた。

上を見れば大きな屋根の柱が見える。


どうやら屋根裏部屋のようだ。


家具は今自分が寝ているベッドと小さなタンスくらいだ。


ギシギシと音を立てて何かが上に登って来る。


ドキリとしてその音の方を見ていると、白髪頭の女性が顔を覗かせた。


「おや、起きたようだね。おはようお嬢さん、私の名前はハンナ、お名前を聞いても良いかい?」


ハンナと名乗った女性は屋根裏部屋に入ると私の隣に歩いて来た。


悪意は感じられない。


どうやら私が誰かも分からない様子。


「あ、えっと、名前はエトラです」


私は咄嗟にミドルネームを答えた。

一瞬ハンナさんが目を大きく見開いて私をマジマジと見つめる。

ミドルネームは正式な場所でしか使用しない為に、公には知られていない。

だから、私がルワールの王女だとは気付かないだろう。


「そうかい、エトラだね。お前さんは今朝方家の庭に寝ているのを私の旦那が見つけてね、ここに寝かせたんだ」


子供とは言え、結構な重さがあるのに、凄いなぁと半分現実逃避のように考えた。


「それで、お前さんの事情を聞こうと思ってね」


「あっ・・・すみません。分かりません。覚えていません」

昨夜の事を思い出すとカタカタと体が震える。


ハンナさんはそんな私の頭を優しく撫でると


「忘れたならそれでも良い」


と、優しく諭すように言ってくれた。


「家は旦那と私の二人暮らしだから子供が一人増える位はなんてことない。ここで暮らすかい?」


ハンナさんはそう言うとニコリと微笑んだ。


どうせ、国へ帰った所で何も役に立たないし、もしかしたらまた命を狙われるかもしれない。

なら、このご厚意は素直に受けた方が良いのではないだろうか?


「もし、よければお願いします」


私は立ち上がり一生懸命お辞儀をした。


下を向いた時に一瞬目に入った自身の両腕の火傷のような痕。


どうしようと腕を擦るとハンナさんが小さなタンスから子供用の長い手袋を出してくれた。


「気になるならこれでもしなさい」


「ありがとう」


私は素直にお礼を言うとその手袋をはめた。


はめている時に結婚指輪に気付いたが、ハンナさんの目もあるので気付かない振りをしながら手袋をはめた。


「もう直ぐ昼ご飯だからこれに着替えて降りておいで」


ハンナさんは手袋と一緒に出していた子供用の服を私に手渡しする。


「先に降りているから着替えたら降りておいで、私の旦那にもエトラの事を紹介しなきゃね」


ハンナさんは笑いながらそう言うと階下へと降りて行った。


私はハンナさんが見えなくなると急いで手袋を外し指輪を外そうとした。


しかし、指輪はびくともしない。


「なんで外れないの」


格闘すること数分。


私は諦めて服を着替えてから下へと降りて行った。

お読み頂きありがとうございます。

また読んで頂けたら幸いです。

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