雑用係のタキ登場
巫女の仕事がどういうものか、リナさんが起きてから話し合う事になり、私達は一旦家に帰る事になった。
何せ、アルコール度数の高いお酒をジョッキで一気飲みしてしまったリナさんは起きる気配さえない。
「巫女は邪気祓いとして儀式ではよく酒を飲んでいたから、強いのかと思っていたら、そうでもなかったようだ」
お神酒は普通のお酒だからそこまではアルコール度数強くないと思うし、儀式でジョッキ一気飲みもしないと思う。
ジョッキ一気飲みするような儀式があるのは新社員の歓迎会の余興位だろう。
それに、あれは新人男子が良くやる事で、女子社員でジョッキ一気飲みってないと思う。
そんな事をした日には誰かがお持ち帰りしちゃうよね。
ここはお父さんのウシオさんにお願いして私達は退散した。
今日の収穫は、ウシオさんが海の幸は我が商会に優先的に回してくれる事になった事だろう。
因みに、ウシオさんの奢りで頂いた特別メニューはお刺身だった。
豪快に皿に山盛りに載ったお刺身は、何処から箸を入れていいのか正直に悩んだ。
まるで将棋の山崩し状態で、料理のセンスもない。
せめて海鮮丼とか舟盛りとか何かなかったのだろうか?
今度ウシオさんと相談してお店の料理の改善と改装を試みて、見た目も味も良い料理を売りに店を出すのもありだ。
そう言えば、ワサビがなかったように思う。
醤油とマヨネーズは置いてあったけど、やはり辛味系はないのかもしれない。
酒飲みには七味とか掛けた料理、きっと受けが良いだろうなぁ。
舟盛りは貴族や金持ちをターゲットに出来るような店にも風景にもこだわって、海鮮丼とかは庶民受け出来るようなお店にしよう。
ウシオさんのお店は正直市場の奥を改造した感じの場所で、ちょっと女子受けはしなさそうだった。
だから、あんなトロピカルジュースを出したのだろう。
売れないから。
頭で色々考えていると、向いから商業ギルド長直属の雑用係のタキが手を振りながら走って来る。
翠の髪にアンバーの瞳が人懐っこい感じに微笑む。
「やっと会えました。エトラさん」
息切れしつつそう話すタキは私の一つ下の男の子だ。
追跡のスキル持ちで一度会った人で、会いたいとか探したいと思うと半径2キロ以内に居る場合は居場所が分かるらしい。
この距離はタキの魔力量にもよるらしく、年々その効果範囲は増えていっているらしい。
商業ギルド長も美味しいコマを手に入れたものだ。
因みに、商業ギルドのお姉さん方と仲良くなった私の情報では、タキは偽名で本当の名前は別にあるらしい。
魔力量もこの分だと相当増えると思うので、出自も貴族かもと噂がある。
「ギルド長がお話があるとの事です」
「えっ、何の話だろう。私には特に思い当たる事はないなぁ」
いえ、思い当たる事だらけです。
実は、この前からお惣菜を挟んだパンを販売した所、めちゃめちゃ売れています。
最初は簡単に卵サンド、ツナマヨパン、ハムチーズと、定番を順番に新商品としてお店に出したら滅茶苦茶売れた件?
でも、毎日のように新商品を出しているから、そろそろネタ切れなんだよね。
農家さんとも契約して優先的に食材を手に入れたし、毎日材料が尽きる事がない。
それに加えて、先程ウシオさんと契約して海の幸もゲット。
まさか、さっきの今でそこまではバレていないだろう。
それとも、スライサーが馬鹿売れしてしまい、職人さんのネットワークをフル活用して生産販売を委託して国内に販売してしまった件とか?
生憎、ピーラーは思った程ではなかった。
まぁ理由はジャガイモが家畜の餌と認識されているのが大きな原因かも。
それとも、先日補佐官のマキシムさんに芋用に夏場の暑さを緩和する魔法を倉庫に秘密で掛けて貰ったのがバレた?
どれかな?
「さぁ、僕には皆目検討もつきません」
タキはそう言うとニヤリと微笑む。
これ、絶対に知っているやつだ。
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