ファーストキスは突然に
女性同士がキスするシ―ンがあります。
苦手な方はご遠慮下さい。
「お父さん、そう言う問題じゃないから」
リナさんがウシオさんに掴みかかった。
と、言うかお父さん?
お父さんって言いました?
ウシオさんがお父さんな訳?
まるで美女と野獣のような親子だ。
「おいリナ、お前、酔ってんのか?」
船乗りの酒をジョキで飲み干したリナさんは、明らかに目がイッちゃっている。
船乗りの酒、地球で言う所の海賊の酒かな?
あれってラム酒使っていて、アルコール度数も結構高かったと思う。
それをジョキで出す店も店だが、一気に呷るリナさんもリナさんだ。
「おい、そこのガキ、私が22のオバハンだからって馬鹿にすんなよ、ヒック」
完全に酔っている。
そして、これは絡み酒だ。
「私だってね〜結婚しないんじゃなくて、出来ないんだよ〜。出会いがなぁい」
普通は結婚出来ないんじゃなくて、しないんですと言うべき所が、既に本音で話している。
ドンとジョキで音を出すと「オカワリ〜」と店員を呼ぶ。
「でも、リナさんって巫女さんで運命の人が分かるんでしょう?」
先程リナさんが言っていた事を指摘してやると、リナさんが突然泣き出した。
こんどは泣き上戸かよ。
「巫女は自分の運命は見えないのよ〜。何となく縁のある人やぁ、自分に有利になる人はぁ感覚で分かるだけ〜」
「うえぇ〜ん」と盛大に泣き出すリナさん。
「えっと、お酒を飲んで絡んで来る人とか泣きながら絡む人は私でも遠慮したいですよ。もう少し、可愛い女を演じてみてはどうでしょうか。もし宜しければ私が指南しますよ。これでも既婚者なので」
「本当?」
「はい。それに、運命ではないにしろ、私達に縁を感じたのはきっとこれから我が商会と良好な取引が出来る何かを感じての事だと思うんです。さしずめ、我が商会と薬味等の取引をしてみませんか」
主に唐辛子を。
営業スマイルを顔に張り付けて私はリナさんに仕事の提案をする。
リナさんはそんな私をジッと眺めていたと思ったらボソリと「こんなに綺麗なマナなのに女の子なんてあり得ない」凄く早口で聞き取れなかった。
キョトンとリナさんを見ていると突然私の顔にリナさんが近付いて来て、思いっきり口付けされ、口の中に丸い球体のような物を放り込まれた。
思わずゴックンと飲んでしまったのは不可抗力だと思う。
「我が精霊の祝福があらんことを」
それを見ていたウシオさんが盛大に頭を抱えた。
「契約成立です〜」
嬉しそうに手を叩くリナさん。
「ち・・・痴女だぁ〜」
私がワナワナと口に手を当てていると、リナさんは何故か高笑いをしている。
リナさんは滅茶苦茶ハイで、不思議な踊りを踊っている。
「すまん、馬鹿娘が勝手に一族の契約を押し付けたみたいだ」
何故かウシオさんが盛大に平謝りしてくる。
「一族の契約ってなんですか?」
近くにあったお手拭きでゴシゴシ唇を拭う。
変なフラグ立ててないよね。
「我々一族は他の種族が神々を崇めるのと同じ様に精霊を信仰している」
一種の宗教的な何かかな?
「そして、精霊に綺麗なマナを供給して自然を制御し、この世界の安寧を守っている」
何だか壮大な話になってきたなぁ。
「そう。こんなに頑張っているのにぃ、私はオールドミス〜。こんなに可愛いくて美人なのにぃ」
美人なのは認めるが酒癖が悪いように思う。
「リナさん。きっと貴女を理解してくれる男性が現れますよ。私にもその手助けをさせて下さい。さしずめ、私の仕事を手伝ってくれませんか?お金が動く所には良い男も自然と集まりますよ」
多分。
私の提案にリナさんは両手でガッシリと私の手を取り血走った目つきで「お願いします」と、まるで嫁に来る勢いで返事をした。
そして、私の耳元まで顔を近付けるとボソリと「男だったら5年位待てたのにぃ」と呟いたと思うと私の肩の上で寝落ちしてしまった。
最後は寝落ちかよ。
ってか、私のファーストキス返してくれ〜。
お読み頂きありがとうございます。
また、誤字報告ありがとうございます。大変助かりました。この場で感謝させていただきます。本当にありがとうございます。
また、読んで頂けたら幸いです。
追伸、執筆のモチベーションアップのため高評価頂けたら嬉しいです。今後も宜しくお願い致します。




