婚活巫女さん
今日はメイソンさんと一緒に港に来ています。
ジャガイモの件を国に報告した後に、ベラさんにもフライドポテトの材料の事を話してお店の方を手伝って貰っているので、私は商会に専念しています。
因みにこの世界の雇用や賃金の支払いは、庶民は日雇い日払いが基本らしい。
貴族になると年間雇用契約で月払いの月末払いで給料を貰うので、お金に余裕のない庶民には向かない制度だと言える。
それと、品物のやり取りも給料と同じで、庶民はニコニコ現金払いが基本。
つまり、貴族の支払いは全てツケで払う後払いのために庶民から嫌厭されています。
だからと言う訳でも無いけど、私が発足した農家さん達の組合は受けが良かったんです。
何せ、ニコニコ現金払いを約束して野菜を購入する約束をしたし、野菜の仕入れ値も時価を見ながらドンさんと相談して決める事にしているので貴族のように農家から搾取するような値段を吹っ掛ける気は毛頭ないです。
また、ドンさんには組合の相談役と作物栽培の指導も頼んで月々のお手当ても出す約束もしています。
また、有能な指導役がいれば紹介して貰う事にもなっています。
そんなドンさんから、東の離島から月に一回珍しい薬草を売りに来る商人がいる話を聞いて、我が商会とも取引をして貰えるよう交渉に来ているのが現在までのお話。
そう、薬草の中にあったんですよ唐辛子が。
この国には辛味の料理がなくて、最近物足りなさを感じていた所にドンさんから「体を温める薬」と称した酒を見せられ、そこに沈んでいたのが唐辛子だったと言う訳です。
あまりにも辛い為に、この国では栽培をする人はいないらしいが、私は違う。
甘辛い料理や、ラーメンに入れる七味、はたまたピザに掛けるタバスコ。
今の単調な食生活に辛味と言う色付をしても良いと思うんだよね。
今から仕込めば数年後にはいい感じになると思う。
商売は常に前を見なきゃ。
フライドポテトの次なる波は辛味と見た。
「エトラ、こっちだ」
メイソンさんが船着場に一番近い建物の前で手招きをしている。
とうとう唐辛子の交渉だ。
そう意気込みメイソンさんの所へ行くと、そこには何故か占い師風の女性がいた。
薄いベールを被った女性は淡い色の漢服を着ており、アジアを思い起こさせた。
「初めまして、リナ・ユズキです」
しかし、名前は妙に日本名っぽい。
ユズキって柚木ですよね。
リナも日本の女性の名前っぽいし、まさかの異世界転移とか?
転生があるんだから転移もありかも。
そんな事を考えながらリナさんに魅入っていると
「私達の一族はここより東にある神の島ヤマト島に住んで500年程になります。神の島には聖なる泉があり、私達はそこに祠を作り代々お世話して来た巫女の一族なんです。俗世とは便りを切って長かったのですが、島の人口が減ってしまい、婚活も兼ねて商品を売りに来ているんです」
リナさんは堂々と事情を説明するが、婚活してます宣言をこんなに堂々と初対面の子供に話すなんて、ある意味凄いことだと思う。
「それで、エトラさん。私、メイソンさんとお付き合いしたいのですが、良いでしょうか?」
何故に赤の他人で子供な私にそんな事を聞くのか?
それに、この前メイソンさんは結婚しない的な事を言ってませんでしたか?
「恋愛は自由だと思いますよ」
にこやかに対応すると、何故かメイソンさんがショックを受けている。
もしかしてメイソンさん、断れなくて私に振った?子供の私に?
「ところで、二人はいつの間に出会っていたんですか?」
一応、情報収集は大切だ。
友達付き合いからのーって事もあるしね。
「ほんの10分前に会ったばかりよ」
「えっ!!」
まさかの初対面。
「婚活にはスピードとアプローチが大切なんでしょう。私の見る目は確かなんだから彼と結婚するのは運命なのよ。だって私、巫女だから」
何故か堂々と運命宣言されてしまった。
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