アレックスの懺悔2
翌朝、俺は別邸の瓦礫の撤去を監督していた。
何せ、あの結婚指輪は他の人間が触れると火傷をする代物だからだ。
最初は立って撤去作業を見ていたが、なかなか作業が捗らない様子。
俺は座る場所を探すと手近な所にカバンを見つけ、椅子の代わりにそれに座った。
こんな事なら遺体を見つけたら報告を貰う事にしておけば良かったと少し反省する。
暫く作業を見ていたが、ふと疑問がわく。
なんでこんな場所にカバンが?と。
そこに疑問を持ち、初めてカバンが気になった。
見るとそれは古い庶民用の旅行カバンのようで装飾もなく丈夫なだけが取り柄のようなカバンだった。
気になりカバンを眺めていると「閣下、それはあの王女の物っス。昨日俺が放り投げたから覚えているっス」と、昨日王女を送る御者役を買ってくれた部下が面倒臭そうに返事をする。
騎士にしておくには勿体ない程の才能と機転がきく部下は貧民街の出身だった。
名前はザック。
何処にでもいる茶髪にアンバー色の瞳で、顔も可もなく不可も無くといった普通顔だ。
変装も得意なので諜報員としても重宝している。
「ザック、あの王女の荷物はこれだけか?」
「はい。それだけっス。きっと公爵家でたんまり買って貰おうと考えていたんでしょうぜ」
嫌な物でも見るようにそのカバンを見てザックが言う。
着替えが入っているカバンが外に置いてあったのであれば、あの時間までウエディングドレス姿だったのも頷ける。
どうせ、遺体発見の声が掛かるまでは暇なのだからとカバンを開ければ、そこには数着の古びた継ぎ接ぎだらけの下着と一枚の囚人服のような服が入っているだけだった。
そして、その他には手紙が束ねて入っているのみ。
興味本位で手紙を読んで行くと虫唾が走る思いに駆られた。
殆どが国王陛下から、つまり王女の父親からの物で、婚姻が決まってからの苦言のような物だった。
字が書けるようになったか?
他国でルワールが笑い物にならないよう教養をつけろ。
お前は他の兄弟より劣っているのだから努力を怠るな。
と言う内容が主だった。
他には兄弟からの物で、中でも次男のセドリックの物には驚かされた。
まさか、王女の同行者をくじ引きで決めていたとは。
その内容も王女を蔑むような内容で、自分が陛下から聞いていた悪女の話とは違う内容だった。
「これは、何かの陰謀か?あの王女が俺を騙そうと?」
ワナワナと震える手が止まらない。
が、ワザワザカバンに入れて手紙を持って来て俺を罠に嵌める理由があるだろうか?
「ザック、命令だ。ルワールに潜入してミリアの素行調査をしてくれ」
「今更ですか?」
「今更でもだ。お前を拾ったのは俺だぞ」
ザックはため息交じりにそう言うと頭を一振りする。
「しゃ〜無いッスね〜。丁度公爵様からもルワールの動向調査の依頼を仄めかされていたんで、ついでに調べて来やるっスよ」
「ありがとう、恩にきる」
「その代わり、特別手当宜しくッス」
相変わらず金の亡者め。
「ああ、色を付けてやる」
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