アレックスの懺悔1
ルワールの魔女。
先日、国王陛下より隣国ルワールの王族の話を聞いた。
人を人と思わぬ残虐さ、特に末の姫であるミリア王女は我儘で、魔力が少なく加護も無いことから魔力のある赤子を食べればその魔力が自身のものになると信じて赤子狩りをしていると言う恐ろしい女だ。
そんな悪女を庇護するルワールの王族が支配する国民が不憫だと、我が国の慈悲深い国王陛下はルワール攻略を決意された。
手始めに俺にその性悪女と形だけの婚姻をさせ、そして、事故に見せかけて殺す事になった。
末姫と甘やかされた王女との結婚だ。
ルワールもそれなりの護衛が付くだろうし、それによって隣国の戦力も削がれるだろう。
そのタイミングで我が国が隣国に攻め入れば、勝率はグンと上がるし、単独で末姫の護衛に来た騎士団を制圧する事も可能だ。
案の定、王女の結婚式にはルワールの七英雄と呼ばれている内の三人が国を留守にする事になる。
暴風アンドリューと呼ばれている第三王子。
漆黒の闇の魔術師シュス。
氷剣のゼバス。
どれも一騎当千の戦力だ。
その顔ぶれを確認していると、神殿の奥の扉が開いた。
新婦の入場である。
10歳の子供の結婚式とあり、誓の口付けが無いのが何よりの救いで、それ以外は形式通りに進められて行く。
指輪の交換は俺が生まれた時に作られ神殿に納めていた聖物を使用する事になっており、貴族はそうやって伴侶になる者を特別な存在としている。
その理由は一度填めると簡単には外せない事だ。
外せる条件は神殿の裁判で離婚が成立した場合と、結婚相手と5年以上接触がなく神殿に離婚の申請が受理された場合。
最後に、伴侶が亡くなった時だ。
故に形だけだが、今夜亡くなる予定の王女に指輪を填めるのに何の抵抗もない。
君には可哀想なルワールの国民の為の人柱になって貰う。
そう思うだけで俺の心は高まった。
最悪な女との結婚式を終え、到頭悪女討伐の時間になった。
俺が哀れなルワールの国民を助けるのだ。
勝ちどきを上げて攻め入れば、小癪なルワールだけはあり無駄な抵抗をする。
未だにウエディングドレスを未練がましく着ている姿にも反吐が出る。
怒りに任せて俺の最強の魔術『獄炎』を放ってやった。
性悪だが加護もない女だ、きっと跡形も無く消えるだろう。
燃え盛る屋敷を後に撤収の声を上げる。
炎の見張りに数名の騎士を置いて俺は屋敷へと戻った。
「お帰りなさいませ。首尾は如何でしたでしょうか?」
俺から上着を受け取った執事がそう訪ねて来る。
「獄炎を放って来た。朝まで燃えているだろうよ」
俺の言葉に「そうでしたか。流石アレックス様でございます」と手を揉みながら俺を持ち上げる。
父上からこいつは王家の回し者だと聞いている。
きっと今日中に今日出来事の報告が王宮へ届くだろう。
「後始末もあるから今日は寝る」
それだけ言って部屋へと向かった。
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