餅は餅屋
「レンジさんは光の加護持ちなんですよね」
神官達を納得させられる程の能力になると普通の魔術師では説得力がない。
私の問い掛けにレンジさんは頷く。
「特に隠している訳ではないのだが、神殿に身を置くつもりもないので表立って光の加護持ちとは名乗っていない」
確かに、大々的に言えば神殿の奥地に追い込まれてしまいそうだ。
女性なら聖女とか言われて、想像すらしたくない。
きっと好きな事も出来ずあれこれ質素倹約とばかりに生活させられるんだろうなぁ。
そんでもって、それで私腹を肥やす悪い権力者とかいて、馬車馬のように働かされるんだよ。
レンジさんにそんな暮らしは想像出来ない。
「かと言って、申告していないわけでもない。この国の神殿関係者の上層部は知っているからね」
そりゃぁね。
後で知らなかったと問題になるのは商会の会頭としては避けたい案件だからね。
それと言うのも、光属性は神殿に申告する事になっているからだ。
義務ではないが、決まりではある。
因みにだが、私はヤマト島の巫女として神殿に報告しているらしいので、一応光属性を使えるモグリ魔術師ではない。
「光属性の加護持ちとして、使えるだけの魔術を試したが、どれも効果がいまいちだった」
「完全に効かない訳ではないと?」
加護持ちは一般の魔術師と使える魔術と効果に差がある。
必殺技みたいな特級魔術があるのだ。
私もララーさん曰く光の加護持ちらしいが、多分使える魔術はレンジさんとさほど差はないだろう。
「一時しのぎのものですよ。少しだけ効果が見られる程度の」
それでも、十年という年月を積み重ねてきたのだ。
決して諦めず、決して屈せず、強い思いで。
きっと奥さんの事が目茶苦茶好きなのだろう。
良いなぁ純愛、憧れるよね。
「それで、貴女はどのように妻を救う算段なのか教えて貰えないだろうか?」
レンジさんの真剣な眼差しが私を射抜く。
「私は眉唾ものの情報だろうと全て試してきたつもりだ」
そうだろうなぁ。
多分、レンジさんに諦めると言う文字はないのだと思う。
「私の生まれ故郷のことわざにこう言うのがあります。餅は餅屋と」
「モチ?ですか?」
そうだよね。
この世界に餅はないよね。
今度新作でだそうかな。
レンジさんの問い掛けに思わず思考が斜め上にズレる。
「つまり、専門家に任せるということです。神様を降臨させます」
お読みいただきありがとうございます。また読んでいただけたら幸いです。




