雇用主のレンジさんに
朝食が終わると私はアンドリューお兄様に事の次第を説明する。
「なるほど。つまり神官として同行する人材を連れに数日空けるから、その間のアリバイ工作の為にここに留まって欲しいと言うことだね」
アンドリューお兄様は少し思案しながら相槌を打つ。
勿論、隣で聞いていたジョシュアの顔がみるみる明るくなった事から家主は大いに賛成であることが伺える。
「お兄様にはジョシュアさんの先見で知り得た事を元にヤマタノオロチ攻略の作戦を練っていて貰いたいんです」
多分、致命的な弱点と言うものには期待はしていないが、何かしらのヒントになることがあるかもしれない。
何せアンドリューお兄様は第二騎士団の団長を努めているのだから、少ない情報から色々策を講じる事が出来るだろう。
「分かった。後でゼバスも呼んで対策を練るよ。一応王族の警護と言う形で連れて行く予定だからな」
おお、ゼバスさんも生贄御一行に同行するのか、なら安心だよね。
「今までの生贄は基本的に貴族の子息がなっていたが、何代か前の生贄に王族から出した事がある。文献では同行者の王族に護衛が着いたと記されていた」
王族の特権ですよね。
凄い。
もし、もしですよ、同行者の王族が複数いたら、護衛も複数なのかな?
そんな事を考えていると
「何を考えているか知らないが、護衛はあくまでも一人だけのようだ。それ以上は山に入れない。吹雪になるからな」
なんと、
「それは残念です。勝率はいくらでも高い方が良いと思ったので」
「何人でも護衛を付けて大丈夫ならとっくに軍隊を出して討伐しているさ」
いや、多分軍隊を率いても勝てるとは思えない。
こう言う戦いは少数精鋭が基本だ。
「まぁ、色々策を講じておくから、頼もしい助っ人の確保を頼んだぞ」
アンドリューお兄様はそう言うと私の頭をガシガシのする。
「では、話もまとまりましたのでアレックスは私と一緒にレンジさんを迎えに行きましょう」
そう言って私はレックスさんを見ると、レックスさんは「レンジ」と微妙な顔つきで呟いた。
「私、あまりレノル領に詳しくなくて、案内も兼ねてお願いしますね」
ほら、貴方は私の護衛でしょうと言う目でレックスさんを見る。
それに、レンジさんはレックスさんの雇用主でもある。
行かない選択肢はない。
「雇用主に会うのが気不味いですか?」
私はレックスさんに近付くと小声でそう問い掛けた。
レックスさんは一瞬ハッとした顔になるも、直ぐに「大丈夫です」と営業スマイルを貼り付けたのだ。
あれ?
何か不味かったかな?
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