モリーさんのお願い
翌日の朝食は自室でゆったりと食した。
基本的に貴族の朝は遅い。
それに、貴族の身支度には時間もかかる。
なので、家族ならまだしも、賓客様々はまったりと自室で召し上がる事が多いらしい。
けどジョシュアはアンドリューお兄様と一緒に食事がしたいと食堂で一緒に食事をしようとお誘い頂いた。
勿論私達はお断りしたよ。
決して昨夜の事が原因ではないけどね。
まぁ、でも、アンドリューお兄様は再三ジョシュアに朝食を誘われたらしく、観念してジョシュアと一緒に食事をとっている。
勿論モリーさんと私は自室で朝食をいただいており、現在はまったりとブレックファストティーを飲んでいる。
「ジョシュアさんはいけすかないような男ですが、この紅茶は最高に美味しいです」
モリーさんはどうやらジョシュアのことが嫌いなようだ。
「アレックス様も今頃は大変でしょうね」
モリーさんがクスクスと笑いながら紅茶を飲む。
ああ、レックスさんは私達と一緒に朝食を食べると話した所、アンドリューお兄様に有無を言わせず食堂へと連れて行かれたのだ。
護衛任務兼私の夫役をさせられている為に半ば強制的にドナドナされたレックスさん、無事を祈るだけだ。
「ミリア様、昨夜のお話はどうでしたか?」
勿論、ジョシュアとアンドリューお兄様三人でどんなことを話したか?と言うことだ。
「実は生贄の時の同行者に神官ではなく光属性の戦力になる人を連れて行こうと思っていて、ジョシュアにある人を推薦されたの」
神様の話では勝算は五分五分、下手するとそれより下だ。
今は幾らでも勝率は上げておきたいもの。
「光属性持ちの方ですか」
「ええ、実は知り合いで正直に言えば驚いています」
「ミリア様のお知り合いに?」
モリーさんが珍しく触手を伸ばして来た。
「はい。私の商会と懇意にしている商会の会頭でレンジさんと言う方なんですけど」
モリーさんはレンジさんの名前を聞くと大きく目を見開いた。
「ただ、ジョシュアの話を総合すると、レンジさんの奥様は病気みたいで、それもだいぶ良くない状態で、そんな状態の奥様を置いて参戦をお願いするのは正直憚られてしまって」
体調の悪い奥様を放置させるのは、人として無い。
私が紅茶を飲みながら思案していると、モリーさんが言い難そうに声を掛けて来る。
「ミリア様は神様のご加護を後天的に受けられたと聞きます」
「確かにそうです」
そう、あれは私にとってのターニング・ポイント。
「つまり、ミリア様は先天的な加護持ちと異なり神様と直接繋がったという事ですよね」
「そうですね。今も時々お声がけ頂いてますよ」
何となく、モリーさんの言葉に乗っかったほうが良いような感がして、正直に話す。
「お願いがございます」
モリーさんは突然立ち上がると私に深々と頭を下げた。
「レンジ様の奥様に神のご加護を頂けないでしょうか?」
モリーさんは床に膝をつき私を見た。
「ちょっと、それ以上は止めてください。私にとってもレンジさんの奥様の件は他人事ではありません。知っていたら私も手を貸しました。だから、モリーさん立ってください。詳しくお話しましょう」
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