聖女様に傾倒したわけ
ジョシュアとの話も終わり、旅で疲れたからと部屋で食事を摂りたいと話し、私達は用意された部屋へと来ていた。
勿論、本来なら大食堂等でジョシュアに接待されながら食事を摂るのが礼儀だろうが、あんな話の後で仲良く食事など出来るわけもない。
私達は理由をつけてアンドリューお兄様の部屋で皆で食事を摂っていた。
ジョシュアは最後までアンドリューお兄様と食事をしたそうにしていたが、私の機嫌を損ねた方が悪い。
将を射んと欲すれば先ず馬を射よって言うよね。
この場合先に懐柔すべきは私だったのに、ジョシュアは最後まで私を下に見ていた。
何を根拠にそう思っているのか大体は想像出来る。
同じ年で同じように出来損ないとして扱われて来たが、その扱われ方の過程の違いがジョシュアに変な偏見を植え付けてしまったのだろう。
何せ、王女のくせに囚人服を着て食事も使用人の賄の残り物を食べていたのだ。
自分より下と子供の頃に認識したとしても仕方がない。
「ミリア、すまないね。ジョシュアはどちらかと言うと人の言動を気にして不安になるような子供だったんだが、少し見ない間に大分変わってしまったようだ」
申し訳無さそうに頭を下げるアンドリューお兄様。
「お兄様、頭を上げてください。先程の事は何一つお兄様は悪くありません」
それに、正直に言えばジョシュアは少しイライラしているように見えた。
「あの、一つお聞きしたいのですが」
私は先程の事が気になり、アンドリューお兄様へ質問をする。
「なんだい。何でも聞いて」
アンドリューお兄様は快く二つ返事はで快諾する。
「ジョシュアさんは何故あそこまで聖女様を崇拝しているのですか?」
実際に、まだ聖女になってもいない少女を目茶苦茶擁護していた。
「ああ、そのことですね」
アンドリューお兄様は思い出すように斜め上を見た。
「何でも、昔大聖堂へ礼拝に行った時に今の聖女様とお会いして先見の力を受け入れられたらしい」
確かに自己肯定感は大切だ。
「元々スキルの関係で神殿に行く事は多かったが、どうも、殆どの人がジョシュアを便利な先見の道具としか見ていなかったらしいんだ」
ああ、何となく回答が見えて来ましたね。
ファイナル・アンサーと聞かれたら即「ファイナルアンサー」と答えますよ。
「お兄様の言いたいことは分かりました。つまり、聖女様が唯一ジョシュアを、肯定したんですね」
肯定されるだけで会った事もない次代の聖女様にまで傾倒するとは、ある意味思い込みの激しさに引いちゃう思いです。
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