逆ハーレム要員
「ちょっと待て、そんな逆ハーレム要員に私がなると?」
いつも笑顔を貼り付けたような顔が、見るからに驚愕している。とても新鮮だ。
「逆ハーレムだなんて、聖女様を崇高する選ばれた男性ですよ」
ジョシュアは聖女様を神か何かと思っているのでは?
最初から頭のネジが数本外れているとは思っていたが、これはネジが外れたというレベルではないと思う。
「言っておくが、私は複数の男と妻を共有する趣味はない」
アンドリューお兄様は声を荒げてそう抗議する。
「先生、聖女様は尊い存在なんです。妻と言う括りには収まらないと思います」
ジョシュアは激怒するアンドリューお兄様をなだめるように声を掛けるが、ごめん、その言い回しは逆効果だよ。
火に油を注ぐようなもの。
「先生、光属性とはとても尊い存在なんです。それも聖女様となれば尚の事」
ジョシュアの聖女様への思い入れが半端ない。
「あの、基本的な質問で申し訳ないのですが、その新しい聖女様とはどのように決めるのですか?」
そう、根本的な疑問だ。
その質問に対して答えたのはアンドリューお兄様だ。
「聖女様は前任の聖女様が亡くなった時に神殿に登録されている光属性持ちの魔術師で魔力量が500以上の10代の女性だ。複数いる場合は魔術のレベルや魔力量、そして生まれた血筋の正当性全て考慮し、神殿議会で承認された者が次期聖女となる」
「なるほど」
アンドリューお兄様の説明を聞いて、それ私が該当するのでは?と思ってしまった。
だって、神力を魔力に変換すると余裕で魔力量のボーダーラインを突破するし、光属性の魔術も今や伝説級の神降ろしまで余裕で出来る。
言っちゃえば、神降しはリナさんの息子さんなんて2歳の頃からやっている。
血筋だって、一応元王女だし、今は隣国の次期公爵夫人だ。
ここまでくれば誰が次期聖女かなんて分かりきったことだ。
「お兄様、私はそんな節操なしじゃありません。もう夫もいますし、間違ってもお兄様達を侍らすことなんてありません」
どうだ。
そう言いたげに胸を張ると
「ミリア様では魔力量が足りないですよ」
と、如何にも当然とばかりにジョシュアが言う。
私はそんなジョシュアに思わずため息を吐いて見せた。
どうやら馬鹿に塗る薬はないとは本当らしい。
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