どこの乙女ゲームでしょうか
「実は、僕の先見の力で知ったのですが、ある商会の会頭が光属性の持ち主なんです」
とんでもない事を聞いているような気がする。
思わずアンドリューお兄様の方を見ると、アンドリューお兄様も目を大きくして驚いているようだ。
「詳しくは分からないのですが、聖女様は『レンジさん』と呼んでいました。そして、大きな商会の会頭をしているとも話していました」
「えっ、聖女様?」
何だろう、何処かの乙女ゲームのストーリーのようなフレーズは。
「あの、この世界に聖女様と言う方がいるのですか?」
聖女様がいるのならヤマタノオロチの討伐に参加して貰った方が良いのでは?と思った。
思ったら言葉が口を出ていた。
「今は聖女の位に着いている方は御年72歳の女性です。とても山道を連れてヤマタノオロチの討伐へ行くことなど無謀とも言えます」
アンドリューお兄様はすかさずそう説明する。
「すみません。僕の言葉が足りませんでした。僕が見た世界は多分ヤマタノオロチへの生贄が済んでから数年後の世界です。先見で見た聖女様もとても若い女性で、まだ学生と言う事もあり特別に学園への通学が認められていたようです」
何だろう、その聞くからに乙女ゲームのような設定は
「神殿へ多額の寄付をされたレンジさんと言う方と聖女様が色々親しくお話をされている姿が見えたんです」
多分、ジョシュアの言っているレンジさんとは、私の知っているレンジさんで間違いないと思う。
「彼は光属性の力があったのですが、最愛の奥さんを救うことが出来ず未だに苦しんでいると話していました」
「えっ、レンジさんの奥さん亡くなっているんですか?」
クーラーやヒーターを作った時に「これで妻も快適に過ごせます」と喜んでいたレンジさんの姿が思い出される。
「何でも、長く病魔と戦い結局はと言う内容でした」
そんな、あのレンジさんにそんな事があったなんて、早速今夜にでもララーさんと相談しなくては。
「そんな傷心のレンジさんに聖女様が優しく寄り添うと言う内容です」
だから、何故そんな乙女ゲームのような内容なのか。
「ただ、その時には聖女様は王子と結婚するとかしないとか噂が出ていてですね」
「王子とは?」
突如アンドリューお兄様がジョシュアの話に食い付いた。
「第一王子と第二王子が候補に上がっていて、射止めた方が次期国王と言う噂が流れてました」
だから、何処の乙女ゲームだよ。
「ちょっと待って下さい。その王子とはまさか我が国の事ですか?」
「勿論ですよ。隣国は王子様一人っ子じゃないですか」
楽しそうに説明するジョシュア。
先見の話はジョシュアのテリトリーだ。
水を得た魚のように生き生きと説明をする。
「どうもこうも、私の兄上達はどちらも婚約者がいますから」
あー、本当にこれってどこの乙女ゲーム?
思わず心の中で絶叫した。
お読みいただきありがとうございます。また読んでいだけたら幸いです。




