それはジャガイモです
一話抜けてしまい、申し訳ございません。
楽しんで頂けたら幸いです。
ピーラーとスライサーの説明が終わると、詳しく商品登録をする為にメイソンさんは一旦特許申請の手続きで別室へと向かった。
特許は商会の所有となるので、他の人が使用する場合は特許料をギルド経由で支払う事になる。
勿論、ギルドを通す事により中間マージンは取られるが、無断使用や類似品の取り締まり等の兼ね合いもあり、新しい商品は商業ギルドへの登録が一般的だ。
因みに、特許については商品登録後50年となっている。
上手くすると孫の代まで特許料が貰えるのだ。
「さて、そちらで今販売しているポテトフライとフライドポテトだが、今まで食べたことのない食感の食材を使用していますよね」
メイソンさんが席を外すとギルド長が食い付くように聞いてきた。
「そうですね。元々食べれる物だったのですが、人間が食べる物とは認識されていなかった食材です」
そう言って私は紙袋をテーブルの上に置く。
「この中にその食材が入っていますが、これを公表する時期やタイミングを悩んでもいます」
もったいぶる気は無いのだが、何せ提示する物が家畜の餌なのだ。
貴族相手に家畜の餌を食べさせたとなると厄介だから、その辺りの世情を読みたいところなんだが。
「それは、その中身が普通の食材ではないと言う事でしょうか?」
普通か普通でないかと問われれば普通のジャガイモなのだが、何せこの世界の人達は家畜の餌としか思っていない。
「この食材を使う上での注意事項がいくつかあります。まずは実物をご覧ください」
そう言って私は紙袋からジャガイモを取り出した。
「なっ、家畜の餌?!」
ギルド長は驚いて叫ぶが、まぁ、そうなりますよね。
想定内の反応故に、相手に隙を見せないように説明を始める。
「これはジャガイモと言いまして、これの皮と芽の部分を取り除いて調理しています」
「しかし、これには毒素があるはず」
ギルド長は信じられないと言う顔つきで私を見る。
「毒素はジャガイモの管理に原因があるからです。最初に毒素が出来るのは栽培時に土から出てしまい太陽の光を浴びてしまうことです。その事によりジャガイモに毒素が多く出現します。見分け方としては、緑色の所が毒素を多めに含む事がありますので、そこを大きくカットすれば大丈夫でしょう。次に、収穫後に太陽の光をあび毒素が出た場合です。ジャガイモは収穫後乾燥させ風通りのよい涼しい場所で暗くして保管するのがいいでしょう。温度としては春先の気温位が良いかと。それと、芽が出て来た場合は芽の周辺も毒素を含みますので、大きめにカットして使用する事を推奨します」
長々と説明するとギルド長は目をパチパチとさせながら一つ大きく相槌を打った。
「何と、そうでしたか。知りませんでした。なぁマキシム」
ギルド長は隣で話を聞いていた補佐官に同意を求める。
「それが本当なら、我が国の食料問題に大いに貢献する出来事です。エトラさん是非とも国へジャガイモの件を報告申請するべきです」
「そうですね。今の話が事実なら国から報奨金が出ますよ」
「報奨金ですか?」
お金と聞いては黙ってはいられない。
「はい。今回の内容ですと新しい店舗を王都の中心に建てられる位の報奨金は出ると思いますよ」
ギルド長の一言に思いっきり食い付いてしまった。
「是非申請させて下さい」
チャンスは自ら掴むもの。
軍資金は多いに越した事はない。
そして、私はその勢いのままジャガイモの新たな食材申請を出すのだった。
この事で、この国の食文化は激変することになる。
そして、私はハンナさんに以前から聞いていた息子さん夫婦が契約していた大農家へアポをとるのだった。
お読み頂きありがとうございます。
また、読んで頂けたら幸いです。
執筆のかのため高評価頂けたら嬉しいです。




