その擬態はないと思う
「これが神使・・・では、アレックスの腰に巻かれていた白い物は神使?」
アンドリューお兄様の言葉に私は一瞬で遠い目になった。
ああ、そうでした。
「そうですね」
ベルトにしようかと言った時は冗談かと思っていたけど、どうやら本気だったようだ。
普通に肩にでも乗せるのかと思っていたのに、何故よりによってベルトに擬態させたのか。
「もしや、敵を欺くために腰に巻いたのか?」
アンドリューお兄様は真剣に悩んでいるようだが、どうだろう?私は違うと思うんだよね。
「別に擬態させる必要はないかと思います。寧ろ不自然です。悪目立ちしますよね」
そう断言すると、アンドリューお兄様は高らかに笑った。
「ハハハハハ、アレックスの意外な面が見れたと言うことだな」
実に面白そうに笑うアンドリューお兄様。
腹を抱えて笑わないだけ良しとしよう。
「敵を欺くと言いますが、この場合の敵とは誰のことでしょうか?もし、ヤマタノオロチの事を言っているのであれば無意味だと思いますよ」
神様達の話からすると、ヤマタノオロチは元々は神様だった存在だ。
魔力や神力を感知するのはお手の物だろう。
「まぁ、そうだろうね。王室で管理されている資料では、ヤマタノオロチは邪神と記されていた。邪神を鎮めるために生贄を定期的に出すとも」
アンドリューお兄様はそう言うと顔を曇らせる。
「ミリアは怖くないのかい?もし万が一討伐が失敗に終われば・・・」
再会してから初めて見せる兄の悲痛な顔。
「怖くないと言えば嘘になりますが、どちらにしろ、この世界は倒すか倒されるかしか選択肢がないのです。今回のヤマタノオロチへの生贄が完遂すると、ヤマタノオロチは完全復活へと移行するらしいです」
私の説明にアンドリューお兄様は目を大きくする。
「今はまだ完全体ではありません。神様達も力を貸すと言っている今が最後のチャンスなんです」
そう、どちらにしろ私達には選択肢はそう多くはない。
今回の生贄を出して束の間の平穏を享受した後に完全復活をしたヤマタノオロチに殺されるか、今戦うか。
「ヤマタノオロチが完全復活?」
初めて聞くと言う顔で私を見るアンドリューお兄様。
「はい。そうです。私は神様達からそう啓示を受けました」
まさか、神様達と交流しているとは流石に言えない。
「これは、我々人類に残された最後のチャンスなんです。アンドリューお兄様、私と共に戦ってくれますか?」
私は真っ直ぐな目でアンドリューお兄様を見る。
「勿論だ。もとよりそのつもりでここに来ている」
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