風の神使
パァーっと光ったと思ったら、そこから白く長い物が飛び出してきた。
ニョロちゃんだ。
ニョロちゃんは袋から飛び出すとアンドリューお兄様の周りをクルクルと回る。
今度のニョロちゃんの瞳の色は緑だ。
エメラルドグリーンと言うべきか、とても澄んだ綺麗な色だ。
「なんだ、これは」
アンドリューお兄様は目を見開きニョロちゃんを見る。
「凄いパワーを感じる。普通の動物ではないな」
流石はアンドリューお兄様。
その通りです。
ニョロちゃんは神様の使いなんですよ。
けど、それを説明して納得して貰えるだろうか?
「ミリアの袋から出たように見えたが」
アンドリューお兄様は私の方を見ると目を細める。
暗に「説明しろ」と目で訴えているとしか言いようがない。
「あの、ですね。実は神使なんですよ」
私はニョロちゃんを見ながら小声でそう告げた。
「神使?神々の世界と現世を繋ぐと言われている神の使いだと言うのか?」
「はい。その通りです」
アンドリューお兄様は顎に手を当て私をジッと見る。
沈黙が重い。
黙ったまま何やら思案するアンドリューお兄様。
数分の沈黙の後にアンドリューお兄様は口を開いた。
「それが本当ならミリアは神々の力を借りられると言うことだね」
「はい。一時的なものだろうけど、借りることは出来ると思います」
歯切れ悪くそう言うとアンドリューお兄様は再び思案する。
本当なら堂々と神様達の力を借りると言うところだが、ルワールに入ってから事情が変わったのだ。
多分神様からの力を借りるのには相当な神力を使うだろう。
それを考慮しても、私の神力ではそんなに発動は出来ないと思うんだよね。
「実は、その事でお話をしておかなければいけない事があります」
私はアンドリューお兄様の目を真っ直ぐに見て口を開いた。
「実はルワールに入ってから私とアレックスさんの魔術を発動する時に使用する魔力の量が著しく消耗するようなんです。それで、神様に神託を貰ったら神使の力を借りるようにと言われました」
私の言葉にアンドリューお兄様も頷く。
「私もマルセタで魔術を使った時に違和感を覚えた。ルワールにいた時より魔力の消耗は少なく、威力も良かった。もしかしたらだが、ルワールは何かの影響で魔力や魔術を阻害されているのではないかと」
私はアンドリューお兄様の言葉に静かに頷く。
「その通りです。その阻害された物を緩和するための神使なんです」
先程からアンドリューお兄様の周りをクルクルと回っていたニョロちゃんは何時の間にかアンドリューお兄様の肩の上に巻き付くように鎮座する。
「その子は多分風の属性の神使です。アンドリューお兄様に反応して出て来たのだと思います」
「風の神使?」
アンドリューお兄様はそう言うとニョロちゃんの頭を撫でる。
「そのようだ。この子から風の息吹を感じる」
「お兄様、是非その子に名前をつけてください」
私は笑顔でそう言うと、アンドリューお兄様はコクリと頷いた。
「では、エアと名付けよう」
アンドリューお兄様がそう言うと、エアと名付けられたニョロちゃんは嬉しそうに再びアンドリューお兄様の周りをクルクルと回った。
お読みいただきありがとうございます。また読んで頂けたら幸いです。




