神殿都市は今
アンドリューお兄様はその後も色々と王宮の内部事情やヤマタノオロチに関する話をしてくれた。
ヤマタノオロチについてはルワールでは邪神として扱われており、その昔、ルワールの南に位置していた聖域と言われる多くの神殿が建ち並んだ都市が世界から消えたのはその邪神のせいだとされていて、その邪神がこれ以上暴れないように、王族に連なる子供を生贄に捧げているらしい。
実はその神殿都市は違う空間にあり、神様達が暮らしていますなんて、誰が信じるだろう。
「まぁ、昔の文献では神様がその神殿に住んでいた。みたいな下りがあるが、眉唾物だな」
アンドリューお兄様はそう言って苦笑いするが、いえいえ、それ本当ですよ。
「それに、ルワールの王族には生贄になる特別な意味があるらしいんだが、それが何なのか分かってはいない」
アンドリューお兄様は風の加護持ちだ。
神様達は言っていた。
生贄になった子供の魂を救う為に加護を授けて再び人としての生を与えていると。
つまり、加護を持つ人間は前世でヤマタノオロチの生贄になった人だと言うことだ。
例え、魂の記憶がなくてもヤマタノオロチに対する気持ちは残っているのかもしれない。
「ミリアがヤマタノオロチを退治すると言うのなら私は全面的に協力をしよう。何故か昔からヤマタノオロチと聞くと無性に怒りが湧き上がるんだ」
初めて見るアンドリューお兄様の怖い顔に私は息を呑んだ。
「実を言うとジョシュアは私の初めての生徒でもあるんだ。生贄になる事を言われた日からジョシュアは笑わない子供になってしまったんだ。それが許せない」
現世と前世の怒りが合わさって、アンドリューお兄様はヤマタノオロチに強い怒りを募らせているように思う。
「山に一緒に入れる人数は3人まで。慣例に習えば親族2名と見届人の神官1名と言う事になる。親族は私と夫であるアレックスが同行する事になり、神官は神殿から派遣される事になる」
夫かぁ、でも、レックスさんは本当の夫ではないんだよね。
その辺りはヤマタノオロチに嘘だってバレないのかな?
それとも、同行者は人間側が勝手に決めたルールなのだろうか?
「なので、王宮に着いたら神殿から見届人になる神官が派遣される事になっている。ジョシュアには王宮に入る前に私の邸宅で会えるように手配しておくよ」
「はい。そのようにお願いします」
私はニコリと微笑んでアンドリューお兄様の提案を受け入れた。
色々不安はあるけれど、私には神様達がついているし、ニョロちゃんもゴンちゃんもいる。
そう言えばと思い、麻袋に手を触れるとパァーと麻袋の口が光った。
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