ニョロちゃんの名前はハク
「ところでエトラ、その格好だが、部屋にいる時まで女装する必要はないんじゃないか?」
レックスさんが居心地悪い様子でそう切り出して来た。
「レックスさん、いつ何時敵が来るか分からないんです。もし私が王女でないとバレたら大変なんです。油断大敵です」
一応本当の女で、一応王女なんだけど、何が悲しくてレックスさんに女装と言われなきゃならないのか。
「エトラが女の格好をしていると、何となく調子が狂うんだよ」
レックスさんはそう言うとお茶を飲み込む。
まぁ、男友達が女装して、尚且つ自身がその友達の夫役をさせられていたら気持ちも分からなくはないけど。
「所で、こいつの名前は何て言うんだ?」
「名前・・・」
言われて初めて気付いた。
名前、知らない。
ゴンちゃんの時も勝手に名前が決まったので、特に考えなかったが、正直に言えば私にはネーミングセンスはない。
「なんだったかなぁ」
正直知らない。
私が頭をひねっているとレックスさんが「名前、分からないならエトラが決めてくれ」とお願いして来る。
「え〜、ニョロちゃん達だからニョロ吉とかニョロ太とかニョロ助?」
私の発言にレックスさんが微妙な顔になる。
やっぱり変だよね。
うん。
分かっていた。
昔、猫に名前を付けようとしてニャン太にニャン美と付けて笑われた事を思い出す。
きっと、レックスさんも呆れているに違いない。
「エトラ、動物は二文字の名前が良いらしい。長くても三文字だ」
「へ?」
「俺も犬を飼っていた事があるんだが、動物は長い名前は覚えられないらしい。名前は短くだ」
真面目な顔でそう力説するレックスさん。
「はい。あの、もし良ければレックスさんが名前をつけてくれませんか?この子もレックスさんに懐いているようですし」
私がそう言うと、レックスさんがニョロちゃんを見る。
「そうだな。白いからハクはどうだろう?」
ニョロちゃん皆白いんだけど。
そう思いレックスさんを見ると何故か「ハク」と呼びながらニョロちゃんの頭を撫でているではないか。
頼んだ手前、余計な事は言えない。
「ハク、良い名前ですね」
私は同意していた。
そして、ニョロ見て「今日から貴方はハクで良いかな?」と幼稚園の先生の様に訪ねる。
ニョロちゃんはコクンと頷くような動作をして了承した。
「どうやら本人も気に入ったようです。流石レックスさん」
自分のネーミングを棚に上げてレックスさんのネーミングセンスをけなすのはどうかと思うが、火属性の神使にハクはないかな?と思ったのは言うまでもない。
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